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2020年07月20日

福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審) 第1回口頭弁論期日のご報告

福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)は,福島第一原発事故によって千葉県に避難された6世帯17名の方々が,国と東京電力に対して損害賠償責任を求めている裁判です。第1審である千葉地方裁判所民事第5部は,平成31年3月14日,国の責任を否定する判決を言い渡しました。

 

現在,福島原発千葉訴訟第二陣の審理は,千葉地裁から,東京高等裁判所第16民事部へ移りました。

 

そして,福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)第1回口頭弁論期日が,令和2年7月10日(金)午後2時より,東京高等裁判所101号法廷にて,行われました。なお,審理が先行している福島原発千葉訴訟第一陣(控訴審)は,結審日が8月21日(金)14時に決定しました。

 

 

 

傍聴席は,新型コロナウィルス感染対策防止のため,数に限りがあったものの,満席でした。 

 

 

第1回口頭弁論期日では,本訴訟の意義・国の責任・本件事故に基づく損害の概要につき,口頭で説明するため,弁護団員4名とご本人に2名(※1名は,弁護団員による代読)よる意見陳述を,合計35分程度かけて,法廷で行いました。以下は,実施した意見陳述の概要を記載したものです。 

なお,東京電力と国は,意見陳述を行いませんでした。

 

 

〇この裁判の意義について

 

・「事故は起こりえない」と偽りの安全神話のもとで国策によって推進した原子力発電所が、予見できたはずの津波対策を何らとらなかった末に世界最大の原発事故を招いた、その責任を誰もとらないのなら、十数万に及ぶ原告ら原発被害者には、その被った精神的打撃が癒されることもないばかりか益々絶望の底に沈んでしまうしかないのです。

 

・本件では、特に、これまで中間指針基準ではごく僅かな補償額しか認められず不当な扱いを受けている本件原告ら区域外避難者に対し、その被害の実態に見合った明快な賠償命令が強く求められます。原発事故によって余儀なくされた避難生活の苦悩は、避難区域指定の有無によって何ら異なるものではないからです。

 

・この当たり前の適正な賠償の実施を、国と東電が、自ら「原発事故加害者として」実行するのでなければ、真の被害の回復も法の正義も全く実現することが出来ず、すべてを奪われた本件原告ら原発被害者に笑顔と希望が戻ることは決してないのです。

 

 

 

〇責任論①予見可能性

 

・「長期評価」に基づいた予見可能性の存在により省令4条1項への該当性が認められる場合,国は,同条項に定めるとおり,事業者に対し「防護措置」等の「適切な措置」が講じられるよう速やかに規制権限たる技術基準適合命令を発すべきものである。それにもかかわらず,当該状況下において当該権限の行使を怠ったことが,法令の趣旨,目的に照らして許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められる場合には,国は,その不行使により被害を受けた周辺住民等との関係において国賠法1条1項の責任を負う。

 

・本控訴審での最大の争点である津波の予見可能性の判断手法は,予見対象となる津波に対する予見を基礎付ける知見-本件では「長期評価の見解」-が,規制権限の根拠規定たる省令4条1項の「津波により原子炉施設の安全性を損なうおそれがある場合」を基礎付けるだけの地震学上の「客観的かつ合理的な根拠を有する知見」かどうかの判断に尽きている。そして,この地震調査研究推進本部によって策定された,2002年「長期評価」が「客観的かつ合理的な根拠を有する知見」であることは,これまでの原告らの一審段階での立証によりすでに明らかである。

 

・長期評価が公表された2002年当時,保安院は,同年8月に事業者たる東電にわずかなヒアリングを行っただけで,当時,長期評価を規制に取り込むかどうかの調査や判断を一切尽くすことなく,その後も対応を怠り続けた。規制権限不行使の違法性判断において,いわば当時の保安院対応に対する評価は,同判断に不可欠である。

 

 

〇責任論②結果回避可能性

 

・原判決が「結果回避可能性の有無」という独自の判断枠組みを設定し、これを否定したことは、誤りである。原子炉等規制法の趣旨目的に反し、経済的資源との安易な比較衡量は許されず、決定論に基づく設計基準事象に対する安全確保において、経済的な事情は優先されない。

 

・防潮堤設置には多額の費用と長期の工事期間を要するが、だからこそ、防潮堤建設に先駆け、短時間かつ低額で実施できる水密化対策や電源確保対策を実施すべきであった。考慮すべきは想定津波と本件津波との比較ではなく、敷地高を超える津波に対して、電源をどう守るべきかである。

 

・防潮堤設置よりも先に、あるいは防潮堤設置と同時に(並行して)、①「タービン建屋等(共用プール建屋を含む)の水密化」・②「重要機器室の水密化」・③「電源確保対策」の水密化対策や電源確保対策を行うべきである。これらの水密化対策や電源確保対策は、防潮堤設置に比べてはるかに低額かつ短期間で実施可能であった。

 

 

〇損害総論

 

・私たちは、一審判決のその内容ももちろんですが、むしろ、その判断理由の薄さに強い憤りを覚えています。一審千葉地裁判決では、損害総論について、わずか6頁しか紙面が割かれませんでした。一審原告らが主張していた知見の信頼性や法的な評価等についてはほとんど言及されることはありませんでした。主張が十分に検討されたとは到底思えません。

 

・一審のように国の決めた避難区分や賠償基準をそのまま鵜呑みするのではなく、むしろ、様々な知見を検討し、国が定めた区分や基準について積極的に検証していくことが必要なのではないでしょうか。

 

 

〇一審原告本人らの意見陳述

 

・表面上は除染したというものの,放射線量の数値は依然として高いままです。除染したといっても,元の状態に戻したわけではないのです。避難して10年近く経過しました。町も人も変わってしまいました。住民の意識が別れてしまっている状況では,福島に戻ることは困難なのです。

 

・今年に入り、コロナウイルスが流行しています。その状況や目に見えないものへの不安が原発事故の避難生活に似ており、わたしは当時の光景がよみがえり、不安感などが強くなり体調が悪化してしまい薬を変えるなどして通院中です。わたしは今でも原発事故の苦しみからは解放されていません。わたしは年々原発事故を忘れるどころか、逆に失ったものの大きさを感じています。震災前のふるさとに帰りたいです。

 

 

 

 

次回,福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)第2回裁判は,令和2年9月23日(水)午後2時より,東京高等裁判所101号法廷にて,開かれる予定です。

 

 

 

今回の控訴審第1回口頭弁論期日において,一審原告ら・東京電力・国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の書面をご覧ください。

 

 

200710 控訴審第1回裁判のご報告

 

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