トップ>福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審) 第8回口頭弁論期日のご報告
2021年12月09日
福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)は,福島第一原発事故によって千葉県に避難された6世帯17名の方々が,国と東京電力に対して損害賠償責任を求めている裁判です。第1審である千葉地方裁判所民事第5部は,平成31年3月14日,国の責任を否定する判決を言い渡しました。現在,福島原発千葉訴訟第二陣の審理は,千葉地裁から,東京高等裁判所第16民事部へ移っております。
福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)第8回口頭弁論期日が,令和3年12月8日(水)午後2時より,東京高等裁判所101号法廷にて,行われました。
傍聴席は,新型コロナウィルス感染対策防止のため,数に限りがあったものの,少し空席が目立ちました。
第8回口頭弁論期日では,弁護団員1名が,一審原告の方々が今回提出した書面の要旨(本年9月29日高松高裁判決に基づく主張)を,合計20分程度かけて,法廷で説明しました。以下は,弁護団員1名が法廷で説明した内容の概要を記載したものです。
なお,東京電力と国は,いずれも意見陳述を行いませんでした。
第25準備書面の説明と国の第13準備書面への言及
・4つのうち3つの高等裁判所が、国の規制権限不行使が著しい怠りとして、その違法性を肯定したことになり、その判決の持つ意味は極めて重要であるので、今般、この高松高裁判決全文を証拠提出するとともに、本書面によって、特に責任論における争点がほぼ私たち一審原告の主張が容認されたことの意義を主張するものが今般の第25準備書面です。
・経済産業大臣による技術基準適合命令の不行使の違法性について、その最大の争点である「長期評価」の津波予測知見による予見可能性につき、高松高裁は、以下の通り判示しています。「長期評価の見解は,法に基づき設置された国の機関である地震調査研究推進本部(海溝型分科会)において,専門家集団が,当時の科学的知見・歴史資料から確認できる既往地震の性質や規模,その震源域等に関する研究成果等の科学的な知見に基づいて,種々の見解・異論を踏まえて高度に専門的な審議を行った上で取りまとめられ,公表されたものであるから,相応の科学的信頼性を有するものと評価できる。」この判旨は、既に出ている東京高裁令和3年2月19日判決をそのまま踏襲するものとしても重要です。第13準備書面で、一審被告国は、長期評価では、原発規制に取り入れるべき専門性、科学性をもった審議会を経ていないかのような独善的主張を執拗に繰り返します。しかし、何度でもいいますが、仙台、東京、高松の各高裁は、長期評価が、「高度に専門的な審議を行った上で取りまとめられ、相応の科学的信頼性を有する」(下線筆者)と、明確に判示しているのです。
・想定される津波について講じるべき措置について、高松高裁は、「長期評価の公表当時の諸事情に照らすと,経済産業大臣において,平成14年段階において,上記想定津波に対しては,防波堤・防潮堤等の設置に加えて,タービン建屋等の水密化及び重要機器室の水密化をも想定することが可能であった。」と判示して、結果回避可能性を明確に肯定しました。このことは、私たちが前回、第24準備書面において詳細に主張した結果回避措置の妥当性をそのまま認めたものと高く評価されます。
・そして、高松高裁は、まとめとして、国の規制権限不行使の違法性につき、経済産業大臣が、長期評価の公表後、福島第一原発の技術基準適合性についての判断において、専門的、科学的信頼性を備えた長期評価の見解に依拠しなかったことは、許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く、と厳しく糾弾しています。
・本件訴訟についても、全く同じ争点による一審被告国の規制権限不行使の違法を的確に認定していただきたく、最新の高松高裁の判旨を十分に吟味されるようお願いする次第です。
次回,福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)第9回裁判は,令和4年3月9日(水)午後2時より,東京高等裁判所101号法廷にて,開かれる予定です。
今回の控訴審第8回口頭弁論期日において,一審原告ら・東京電力・国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の書面をご覧ください。