トップ>福島原発千葉訴訟第二陣 控訴審 第11回口頭弁論期日のご報告
2022年09月29日
福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)は,福島第一原発事故によって千葉県に避難された6世帯17名の方々が,国と東京電力に対して損害賠償責任を求めている裁判です。第1審である千葉地方裁判所民事第5部は,平成31年3月14日,国の責任を否定する判決を言い渡しました。現在,福島原発千葉訴訟第二陣の審理は,千葉地裁から,東京高等裁判所第16民事部へ移っております。
福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)第11回口頭弁論期日が,令和4年9月28日(水)午後2時30分より,東京高等裁判所101号法廷にて,行われました。傍聴席は,10席程度空席でした。
第11回口頭弁論期日では,一審原告の方1名が,合計60分程度かけて,弁護団・東京電力代理人・国指定代理人・裁判官からの質問に対し,法廷で説明しました。
大好きな仕事を今回の原発事故で失ったこと,本件事故前と比較すると町並みも住んでる人も変わってしまったこと,南相馬市に戻りたいのに戻れない葛藤,昨年4月東京電力の意見陳述を聞いて表面的な上辺だけの話しかせず線引きされた人に対して向き合っていないと感じたこと,現在の住まいは終の棲家ではないこと等につき,お話くださいました。
また,弁護団員1名が,一審原告の方々が今回提出した第28準備書面の趣旨(責任論に関する最高裁判決の不当性)を,合計10分程度かけて,法廷で説明しました。以下は,弁護団員1名が法廷で説明した内容の概要を記載したものです。
なお,東京電力と国は,いずれも意見陳述を行いませんでした。
第28準備書面の趣旨(責任論に関する最高裁判決の不当性)
・最高裁判決多数意見は、原判決において適法に確定した事実に反しており、民訴法321条に反する不当な判断である。
・原判決では、「長期評価に示された見解に基づき想定される津波に対応する措置としては,まずは,防潮堤・防波堤等の設置によるドライサイトの維持であったと考えられ」るとしつつ、「一審被告東電内部における耐震バックチェックの過程において,平成20年推計に基づく想定津波に対応するための防護措置を検討する中で,防潮堤や防波堤による防護措置について,いくつものシミュレーションをするなどして具体的に検討がされたものの,O.P.+10m盤に既存の施設を維持しつつ鉛直壁を設置することの技術的問題,O.P.+10m盤だけでなく,取水口やポンプのあるO.P.+4m盤への浸水に対する対応の問題,工事に要するコストと時間の問題,防潮壁を高く設置した場合にそこに反射した波が周辺集落に向かう波を大きくする可能性があるという問題などが指摘されていた」として、「これらの事情からすると,規制機関においては,平成20年推計による想定津波に対しては,防潮堤等によりドライサイトの維持を全うすることは容易ではなく,安全性確保のための措置として十分ではないと判断した蓋然性があるというべきであり,一審被告東電や一審被告国においては,他の対策も併せて講じることを検討した蓋然性もあるということができる。」との判断をしている。そして、一審原告らが主張する「タービン建屋等の水密化及び重要機器室の水密化」に関して、我が国内では、溢水勉強会での水密扉の必要性への言及があったこと、安全情報検討会で建屋出入口への防護壁の設置が挙げられていたこと、一審被告東電も耐震バックチェックにおいて建屋の水密化を検討していたこと、東海第二原発や浜岡原発において実際に水密化措置が取られていたことが認定されている。国外でも、フランスのルブレイエ原子力発電所、インドのマドラス原子力発電所、アメリカのキウォーニー原子力発電所における水密化対策が本件事故以前から取られていたことも事実認定されている。
・上記原判決における事実認定は、最高裁三浦反対意見においても踏襲された。
・最高裁多数意見は、原判決において適法に確立した事実に拘束されていれば、自然に上記結論に到達すると思料されるところ、民訴法321条を無視して、勝手に事実認定を行い、誤った結論を導き出した。その誤りは早急に是正されなければならない。
次回,福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)第12回裁判は令和5年1月18日(水)午前11時,次々回第13回裁判は令和5年4月19日(水)午後2時,いずれも,東京高等裁判所101号法廷にて,開かれる予定です。第13回裁判にて,控訴審の審理は終了する(=結審)見込です。判決言渡日は,まだ決まっておりません。
今回の控訴審第11回口頭弁論期日において,一審原告ら・東京電力・国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の書面をご覧ください。