当弁護団が,8世帯24名の原発被害者の方々(以下「原告ら」といいます。)の原発事故被害による損害賠償を求めて,東京電力と国を被告とした第2次集団訴訟第3回裁判が,平成26年6月25日(水)午前10時半より,千葉地方裁判所601号法廷にて,行われました。
第3回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,下記のとおりです。
次回,第2次集団訴訟第4回裁判は,平成26年9月10日(水)午前10時30分,千葉地方裁判所601号法廷で行われます。
第2次集団訴訟を審理する裁判所は,傍聴席の抽選を行わない予定のため,傍聴席は,先着順となります。
第2次集団訴訟が注目されていることを裁判官にアピールするためにも,皆様,ぜひとも,傍聴をお願いいたします。
記
(1) 原告らの主張や証拠の提出
★第4準備書面(2)の陳述
○概要
原告らのADR・直接請求の利用状況。
★第4準備書面の13の2(原告番号13・甲ニ第13号証の46について)の陳述
○概要
裁判所から求められた原告番号13番の個別損害に関する釈明への回答。
★第6準備書面(被告らの津波・地震・シビアアクシデントに関する知見)の陳述
○概要
① 被告国及び被告東京電力は,平成14年の時点で,
㋐ 過去に発生した巨大な津波や地震に関する研究
㋑ 文部科学省地震調査研究推進本部が発表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」
等から,本件事故(全電源喪失による炉心損傷)につながるような地震や津波の発生を予見して,津波に関する防護措置等対策をとることは十分可能だった。
② 被告東京電力は,平成18年の時点で,
㋐ 地震学者等の意見
㋑ 平成16年に発生したスマトラ沖地震による原発事故の現実化
㋒ 被告らが開催した平成18年の溢水勉強会において,被告東京電力が想定を超える津波によって炉心損傷が起こる可能性を報告したこと
等から,既往津波を超えるような津波が発生することがあり,この場合,全電源喪失の事態が発生する危険性を認識していた。
被告国も,平成18年の時点で,被告東京電力から報告を受けていたことから,被告東京電力と同じ認識を有していた。
③ 被告国及び被告東京電力は,平成18年以降も,津波地震に関する知見や貞観タイプの巨大連動地震が繰り返されていること等についての知見がさらに高まっていた。
④ シビアアクシデント対策は,日本において,事業者に自主的に委ねられており,海外に比べて遅れていた。
そのため,被告東京電力が行ったシビアアクシデント対策設備は,従来の安全設備よりも耐力が低く,従来の安全整備よりも先にシビアアクシデント対策設備が機能を失う可能性が高いという,実効性が乏しいものであった。
★第7準備書面(原子力体系及び規制権限不行使)の陳述
○概要
① 原子力発電事業に対する安全規制を目的として規定された,以下の法律や審査指針等の内容の説明。
㋐ 電気事業法等の法律
㋑ 発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(技術基準省令)
㋒ 原子力安全委員会が定める各種指針(審査指針類)
② 平成18年当時の技術基準省令及び審査指針類は,次のとおり,国民の生命・健康や環境への安全確保という本来の目的から離れて極めて不十分なものであったこと。
㋐ 技術基準省令が,最新の地震,津波の知見等に適合した技術基準に改正せず,「長時間」の全交流電源喪失を考慮した改正もしなかったこと
㋑ 審査指針類が,地震及びこれに随伴する津波による浸水による原子炉損傷の危険を想定せず,日々進展する最新の津波の知見を反映させたものでないこと
③ 本件の被害法益は国民の生命・身体・健康という不可侵で重要なものである。そして,被告国は,平成18年当時の知見によれば,地震に伴う津波及び全交流電源喪失による過酷事故の発生を予見でき,必要な措置を講じれば,本件事故を回避することは容易であった。
したがって,被告国が,技術基準省令を改正せず,電気事業法40条の技術基準適合命令及び停止命令等の規制権限を行使しなかったことは違法である。
★第8準備書面(被告国の規制権限不行使に係る違法性の判断枠組みに関する補足及び予見可能性の程度・内容,予見義務について)の陳述
○概要
被告国は,
① 地震防災のために,地震について情報を収集し,調査を進める義務を負っており
② ①の義務を果たしていたことを前提に,平成14年7月31日に文科省地震調査研究推進本部が長期評価を発表した時点,あるいは遅くとも平成18年までに集積した,全交流電源喪失をもたらす程度の「地震及びこれに随伴する津波」が発生する可能性があるとの情報により
③ 全交流電源喪失や,放射性物質の大量放出等の重大事故が起こる可能性があることを分かっていたし,きちんと調査して分かるべきだった。
★証拠の提出
○提出した主な証拠
原告らの陳述書や診断書等。
(2) 被告東京電力の主張や証拠の提出
★被告東京電力共通準備書面(1)の陳述
○概要
① 民法709条に基づいて,「原子力損害」の賠償請求はできない。
② 本件事故における被告東電の過失を審理する必要はない。
★被告東京電力共通準備書面(2)の陳述
○概要
被告東京電力は,財物賠償(建物・家財等)を除く賠償については概ね以下の①,財物賠償については以下の②の考え方に沿って,避難等対象者と自主的避難対象者に対する賠償手続きを行っている。
① 原子力損害賠償紛争審査会が策定した中間指針等。
② 経済産業省が公表した「避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方」。
★被告東京電力個別準備書面(1)(原告番号9ないし16の世帯に対する個別認否)の陳述
○概要
① 避難生活に伴う慰謝料については,中間指針やADRでの和解内容に基づき,全て支払い済みである
② 「ふるさと喪失慰謝料」については,中間指針第4次追補記載の慰謝料が原告らが主張する「ふるさと喪失慰謝料」に含まれていると考えている。
原告らの「ふるさと喪失慰謝料」の見解を踏まえ,慰謝料を別途支払うか,検討する。
★証拠の提出
○提出した主な証拠
賠償基準に関する東電作成プレスリリース。
(3) 被告国の主張や証拠の提出
★第1準備書面の陳述
○概要
原告らは,訴えの変更申立書により,本件事故による損害の範囲を拡張して請求しているが,被告国は,原告らの請求を認めない。
★第2準備書面の陳述
○概要
① 被告国が福島第一発電所1号機ないし同4号機の各設置を許可したことは違法でない。
② 被告国は,平成18年の時点で原告らが主張するような福島第一発電所への津波の到来に関する知見を得ておらず,福島第一発電所の敷地高を超える津波が到来することを予見できなかった。
③ そのため,被告国が,平成18年の時点で福島発電所1号機ないし同4号機の各設置の許可を取り消さなくとも,電気事業法に基づく規制権限を行使しなくとも,何ら違法ではない。
★第3準備書面の陳述
○概要
① 被告国が規制権限を行使しなかったことが違法であることを判断するためには,権限を行使しなかった時期前後の一切の事情も踏まえなければならない。
原告が主張する4つの要素(被害法益の性質・重大性,被害の予見可能性,被害の結果回避可能性,規制権限行使への期待可能性)だけで,違法性を判断してはいけない。
② 行政庁には規制権限を行使するか否か裁量があることを前提に,被告は,二次的かつ補完的な責任を負っているに過ぎない。
原子力事業者が,一次的かつ最終的な責任を負っている。
★証拠の提出
○提出した主な証拠
原子力安全・保安院等で構成する溢水勉強会(平成18年1月から始まり,合計10回開催)の議事メモ・議事次第や,溢水勉強会の配付資料。