原発被害救済千葉県弁護団
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2014年08月19日

第1次集団訴訟第7回裁判のご報告

当弁護団が,8世帯20名の原発被害者の方々(以下「原告ら」といいます。)の原発事故被害による損害賠償を求めて,東京電力と国を被告とした第1次集団訴訟を提起しています。

第1次集団訴訟第7回裁判が,平成26年7月11日(金)午前10時半から午前12時にかけて,千葉地方裁判所601号法廷にて,行われました。

傍聴席は,満席でした。

まず,最初に30分ほどかけて,当弁護団は,提出した第19~第24準備書面の要旨を,口頭で説明しました。

次に,当弁護団が,被告国が怠ったシビアアクシデント対策について,裁判所からの質問に答えた後,裁判所は,今後の第1次集団訴訟の進行イメージを示しました。

裁判所は,第8回・第9回裁判において原告らの損害に関する主張・立証を終えることができたら,年明けの以下の日程で,原告ら本人のお話を聞く(原告本人尋問といいます。)予定です。

・1月16日(金)午前10時~午後5時

・1月30日(金)午前10時~午後5時

 

 今後の第1次集団訴の裁判の日程は,以下の通りです。いずれも千葉地方裁判所601号法廷で行われ,傍聴席は先着順となる予定です。

・第8回裁判 平成26年9月19日(金)午前10時半

・第9回裁判 平成26年11月7日(金)午前10時半

 

 第8回裁判においては,原告本人の意見陳述が実施される予定です。

 皆様,ぜひとも,傍聴をお願いいたします。

 なお,第7回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,下記のとおりです。

 

(1) 当弁護団の主張や証拠の提出

    ★第19準備書面(被告国の第6準備書面中の原子炉設置許可処分に関する記載に対する認否と反論)の陳述
      ○概要
        ① 1号機設置許可処分は,許可申請からわずか6ヶ月で下され,慎重に審査された形跡がない。
           1号機設置許可処分当時の安全審査は,“名ばかり”“ずさん”で,“不合理そのもの”であり,最優先されるべき原発の安全性が置き去りにされていた。
        ② 1号機は,非常用ディーゼル発電機について,原子炉の安全を確保するため最も重要かつ基本的な,独立性・多重性の要件を欠いている。
           また,安全審査指針は,単一故障指針の誤りという,安全性に関わる事項についての誤りがある。
           このような原子炉等の設置を許可したことは,違法である。
   
    ★第20準備書面(被告国がシビアアクシデントについて行政上の措置も含め対策を怠ってきたこと)の陳述
      ○概要
        ① 深層防護は原子力安全の最も重要で基本的な考え方である。
           また,外的事象(ex.地震・津波)に起因するシビアアクシデント対策は,原子炉施設が同時に停止する可能性を含むため,厳格でなければならない。
        ② しかし,被告国は,上記考え方・対策の必要性を認識していながら,あくまで内部事象(ex.機器の故障,ヒューマンエラー)に限っての対策(第3層)までしか想定せず,外的事象を含めた第4層以降のシビアアクシデント対策を,事業者の自主的対策に委ね,必要な規制を漫然と怠ってきた。
        ③ 被告国がシビアアクシデントも想定した安全対策として行った行政上の措置は(ex.指針類の改訂,行政指導),深層防護や津波等の外的事象による長時間の全電源喪失を想定しておらず,何ら実効性を欠いていた。
           被告国による被告東電に対する行政指導は,㋐数々の事故等を隠蔽し安全よりも利潤を優先する被告東電の体質,㋑規制当局が被告東電と一体となって安全規制を先送りしていたこと,から手段として実効性がなかった。
        ④ 被告国は,罰則を伴う法令による規制により,実効性ある対策を義務付けるべきだった。
   
    ★第21準備書面(被告国が主張する規制権限不行使の違法性の判断枠組みに対する反論)の陳述
      ○概要
        ①  これまでの国の規制権限不行使の違法性に関する裁判例では,被告国が主張する専門的技術的「裁量」を強調していない。
           また,過去の最高裁判決から導かれた判断枠組みでは,規制権限不行使の違法性判断にあたり,規制権限不行使の前後にわたる一切の事情を考慮していない。
           したがって,規制権限不行使の違法性を判断するにあたり,処分行政庁に裁量が認められ,一切の事情が考慮されるという被告国の主張は,失当である。
        ②  被告国は二次的・補完的責任しか負わないと主張するが,これは,国と企業等の内部負担の問題に過ぎない。
           被害者である原告との関係で用いられるべき理論ではない。
        ③  シビアアクシデントについての知見や諸外国で既にとられていた対策等を考慮すれば,平成24年に原子炉等規制法を改正する前でも,同法に基づきシビアアクシデント対策を行使でき,行使すべきだった。これは,被告国が平成23年に省令を改正したり,行政指導をすることで,シビアアクシデント対策をしていたことからも,明らかである。
           シビアアクシデント対策が平成24年の改正前の原子炉等規制法で規制されていなかったという被告国の主張は,誤っている。
   
    ★第22準備書面(国会審議に見られる被告らの義務違反)の陳述
      ○概要
        ① 吉井英勝議員は,平成18年の国会質疑において,当時の知見に基づいてシビアアクシデントの発生が予想される旨度々質問することで,被告らに対し,事故防止対策を具体的に考え実行するよう示唆していた。平成22年の国会質疑においても,吉井議員は,同様の質問を行っていた。
           被告らは,この質問を真摯に受け止め、必要な資料収集や調査を行うべきだったにも関わらず,これを怠り,本件のような事故を現実のものと考えず,シビアアクシデント対策を取らなかった。
        ② 被告らは,平成19年から本件事故発生までの間,吉井議員の質問等に基づき,なんらかの具体的な資料収集や調査を行ったのか,具体的なシビアアクシデント対策を取ったのか,明らかにされたい。
   
    ★第23準備書面(被告東京電力共通準備書面(3)への反論)の陳述
      ◯概要
        ① 原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」といいます。)は,民法709条による請求を排除していない。理由は,②のとおりである。
        ② 原賠法の目的は,「原子力事業の健全な発達」と「被害者の保護」である。
           民法709条による請求を否定すると,本件事故の原因究明,ひいては将来の原子力事故発生の抑止を妨げる結果を招き,「原子力事業の健全な発達」という目的に反する。また,民法709条に基づき中間指針等の基準に拘束されない損害賠償を行うことは,原賠法の目的である「被害者の保護」にかなう。
        ③ 原子力損害賠償紛争審査会委員野村豊弘教授も,原子力事業者との関係では,民法の適用は否定されていないと述べているし,過去の裁判例も否定していない。
   
    ★第24準備書面(ふるさと喪失慰謝料について)の陳述
      ◯概要
        ① 原告らは,本件事故に基づく精神的損害として,㋐避難生活に伴う慰謝料,㋑ふるさと喪失慰謝料(コミュニティ喪失慰謝料),の2つを請求している。
           避難生活に伴う慰謝料とは,避難状態の解消により,いずれかの時期に終期を迎える性質である。
           ふるさと喪失慰謝料とは,コミュニティの崩壊に基づく精神的損害と放射能汚染に対する不安感等に基づく精神的損害等を含み,終期というものを設定できない。             
        ② 中間指針第4次追補で示された慰謝料は,ふるさと喪失慰謝料ではない。
           避難生活に伴う慰謝料の将来分をまとめ払いする期間を延ばしただけである。
   
    ★第4準備書面の3の3(原告番号3・個別損害についての反論)の陳述
      ◯概要
         原告番号3番が本件事故に伴い支出した放射線の表面汚染に関する検査の移動費用,放射性測定器の購入費,家屋修繕費等は,本件事故による損害である。
   
    ★証拠の提出
      ○提出した主な証拠
         IAEA調査団報告書,吉井英勝議員の質問主意書,安倍総理の答弁書,原子力安全白書,除本理史教授の意見書等
   
(2) 被告東京電力の主張や証拠の提出
  ★被告東京電力共通準備書面(5)(精神的損害の賠償の考え方)の陳述
    ○概要
      ① 原子力損害賠償紛争審査会の慎重な審議を経て策定された中間指針における避難等に係る慰謝料額の賠償基準は,合理的であり相当である。
         被告東電は,中間指針に基づき賠償しているのだから,合理的であり相当である。
      ② 原告らは避難に伴う慰謝料として月額50万円を主張しているが,中間指針を超える部分については,認められない。
 
  ★証拠の提出
      提出した主な証拠は,原子力損害賠償紛争審査会の議事録や資料,被告東電のプレスリリース

(3) 被告国の主張や証拠の提出

  ★第7準備書面の陳述
    ○概要
      ① 大前提として,今回の地震やこれに伴う津波と同規模の地震や津波が福島第一原発に発生・到来することを,被告国が予見することが可能でなければ,被告国が規制権限を行使しなかったことは,違法でない。
      ② 確立された科学的知見に基づき,具体的な危険発生の可能性を予見することが可能でなければ,被告国が規制権限を行使しなかったことは,違法でない。
      ③ 被告国は,二次的かつ補完的責任しか負わないので,事業者のように,原発の安全性について,高度な情報収集・調査義務を負わない。
      ④ 原告らが主張する「長期評価」「マイアミ論文」等の文献を踏まえたところで,被告国は,敷地高さO.P(水位)+10mを超える津波を予見できない。
      ⑤ 平成24年に炉規法が改正されるまで,我が国では,シビアアクシデント対策は,法規制の対象とされていなかった。
 
  ★証拠の提出
      提出した主な証拠は,原子力安全委員会が作成した規制調査の実施方針や安全審査指針類の改訂等を記載した文書

 

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