2016年05月10日
原発被害者集団訴訟とは,18世帯47名の原発被害者(以下「原告」といいます。)の方々が,東京電力と国に対し,原発事故による損害賠償を求めている裁判です。
原発被害者集団訴訟第20回裁判が,平成28年4月26日(火)午後1時45分より,千葉地方裁判所601号法廷にて,行われました。
傍聴席は,ほぼ満席でした。
前回の裁判において裁判長が交代したことに引き続き,本日の裁判において,右陪席裁判官(傍聴席から見ると,左側に座っている裁判官)も交代しました。
右陪席裁判官の交代に伴い,弁論の更新が行われました。弁論の更新とは,これまで当事者が行った主張・立証を,裁判所へ伝える手続です。
弁論の更新として,当弁護団は,60分ほどかけて被告国が本件原発事故の責任を負わなければならない理由について,30分ほどかけて本件原発事故により原告の方々の被害の実態について,法廷で説明いたしました。
被告国が本件原発事故の責任を負う理由として,被告国の主張に対する反論も盛り込みながら,主に以下の点について,具体的な理由も踏まえつつ,説明しました。
① 被告国が予見すべき対象は,福島第一原発の敷地を越える津波である(⇔被告国は今回発生した巨大津波や同規模の津波を予見すべきと主張しているが,これは誤りである)
② 被告国自ら示した公的な津波予測である「長期評価」やその他の知見を踏まえれば,被告国は,2002年,遅くとも2006年までに,福島第一原発の敷地高さを超える津波が到来することについて,予見できていた
③ 本件事故後のように省令を改正し(⇔被告国は,本件事故当時,津波対策をする規制権限がなかったと主張しています。),建物の水密化等を実施すれば,本件事故を回避できた可能性があるので,漫然と何も津波対策をしなかった被告国には責任がある
本件原発事故により原告の方々の被害の実態については,まず,以下の①と②を説明しました。
① 本件事故による原告の方々の損害として,避難生活に伴う慰謝料,ふるさと喪失慰謝料等がある
② 年間20ミリシーベルトの被ばく線量があるか否かにより避難指示区域を設定することは不合理であり,いわゆる区域外避難者が避難することは合理的である
さらに,原告番号1番~17番さんが,本件事故前にどのような生活をしており,本件事故によりどのような被害を受けていたのか,避難前の住居や家族構成も踏まえながら,簡潔かつ的確に説明しました。
その後,被告東京電力は40分ほど,被告国は30分ほどかけて,各々の主張の要旨を説明しました。
被告らの説明に対しては,裁判後の報告集会において,傍聴者の方より,「ただ,文書を読み上げているだけである」「やる気がない」「伝わらない」といった感想がありました。
次回第21回裁判は,平成28年6月10日(金)午後2時より,601号法廷で行われます。
傍聴席は抽選となる可能性がございます。傍聴をご希望の方は,お早めに,千葉地方裁判所1階ロビーへお越しください。
なお,第20回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の報告集会配布書面をご覧ください。