2017年05月09日
原発被害者集団訴訟第2陣とは,いわゆる区域外避難者と呼ばれている6世帯20名(※裁判を提起した時点)の原発被害者が,東京電力と国に対し,原発事故による損害賠償を求めている裁判です。
既に千葉地方裁判所の審理を終えて本年9月22日午後2時に判決が言い渡される「原発被害者集団訴訟」とは,別の裁判です。
原発被害者集団訴訟第2陣第7回裁判が,平成29年4月20日(木)午後1時半より,千葉地方裁判所601号法廷にて,行われました。
傍聴席は,前回同様,多少空席が目立ちました。
第7回裁判より,左陪席裁判官が交代しました。吉元祥太郎裁判官が,左陪席裁判官として,本裁判の審理を行うことになりました。
前回の期日と同様,裁判官が交代すると,これまで行った主張・立証を,「弁論の更新」という手続により,改めて裁判所へ伝える必要があります。
そこで,弁護団は,「弁論の更新」として,被告らの責任についてこれまで行った主張・立証の概要を行うと共に,第7回裁判で提出した原告の方々の損害に関する主張等の説明も併せて行いました。合計約1時間,法廷で口頭で説明しました。
これに対して,被告東京電力・被告国は,これまでの主張について,説明することはありませんでした。
弁護団が法廷で説明した内容を,骨子に絞ると,以下のとおりです。(※なお,原告の方々の損害に関する主張については,プライバシーに関する内容が含まれているため,割愛いたします。)
1 被告らの責任①
・被告らの責任を基礎づける事情として,被告らが予見すべき対象は,敷地高さを超える津波の到来の可能性である。
・そして,被告らが参加して行われた2006年の溢水勉強会等を踏まえれば,被告らが,敷地高さを超える津波が到来すれば,福島第一原発において全交流電源が喪失する可能性があったことを認識していたことは明らかである。
・平成29年3月17日の前橋地方裁判所判決も,弁護団の主張と合致している。
2 被告国の責任②
・「長期評価」が公表される2002年以前より,敷地高さを超える津波の危険性が示されていた。福島第一原発設置当時の津波想定や,4省庁報告書(1997年)が,この根拠である。
・2002年7月に,文科省地震調査研究推進本部より,いわゆる「長期評価」が公表された。「長期評価」は,三陸沖から房総沖にかけての日本海溝寄りで,南北どこでも,1896年明治三陸地震と同様の津波地震が起こりうるとの結論を出した。
・これに対して,被告国は,「長期評価」の信頼性を低下させようと,様々な反論を試みている。しかし,被告国の反論いずれも,「長期評価」の批判としては,根拠がなく,的をえないものである。被告国自身が作成した公的見解としての「長期評価」は,同種訴訟で証言した3名の地震学者の証言も踏まえれば,高度の信頼性が認められることは明らかである。
・2008年4月,被告東京電力は,「長期評価」の考え方に基づき,「津波評価技術」の手法を用いて津波浸水予測の計算を行った結果,福島第一原子力発電所の敷地南側で,O.P.+15.7メートルの津波が,1~4号機でも約2メートルの浸水深をもたらす津波が到来する可能性を明らかにした。「長期評価」の考え方,津波評価技術の計算手法のいずれもが存在していた2002年の段階で,福島第一原子力発電所における具体的な津波高を計算することは,可能だった。
・敷地を超える津波到来の可能性が2002年当時から明らかになっていた以上,被告国は,具体的な数値計算に基づく津波対策を被告東京電力に命じるなど規制権限を行使すべきであった。そうすれば,2008年推計(試算)のような具体的な数値が実際に2002年当時から出せていたはずであり,当時から必要な津波の対策を取ることも十分できた。
弁護団による約1時間に亘る意見陳述をした際,傍聴席の方々より,大きな拍手を頂戴しました。
次回,原発被害者集団訴訟第2陣第8回裁判は,平成29年6月15日(木)午後1時半より,今回と同じ千葉地方裁判所601号法廷にて開かれます。
なお,今回の第7回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の報告集会配布書面をご覧ください。