2018年06月28日
原発被害者集団訴訟第2陣とは,いわゆる区域外避難者と呼ばれている6世帯19名(現在の原告数)の原発被害者が,東京電力と国に対し,原発事故による損害賠償を求めている裁判です。
平成29年9月22日に判決が言い渡され,東京高等裁判所へ控訴した「原発被害者集団訴訟第1陣」とは,別の裁判です。
原発被害者集団訴訟第2陣第14回裁判が,平成30年6月14日(木)午前10時半より,千葉地方裁判所601号法廷にて,行われました。
傍聴席は,ほぼ満席でした。
当日は,弁護団員2名より,約35分ほどかけて,①第26準備書面の概要と,②損害総論について,法廷で説明いたしました。
法廷で説明した内容の概要は,以下のとおりです。
①第26準備書面の概要
・国自身も否定し得ない,原子炉施設に求められる「格段に高度な」安全性を前提にすれば,通説的見解といえる程度に確立した知見に至らない段階においても,法令の趣旨目的を踏まえて,「規制権限の行使を義務づける程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見」があれば,予見可能性の程度は足りると考えるべきである。これまで出された地裁判決,すなわち福島地裁判決,京都地裁判決,東京地裁判決と,いずれもが,原子炉施設に求められる高度の安全性を踏まえて,規制権限行使を義務づけるには,被告国がいうような「通説的見解といえる程度に形成,確立した科学的知見」までは不要であるとして,国の主張を斥けている。
・推進進本部は,防災のために設置された被告国の組織であり,その地震本部が策定・公表した2002年「長期評価」は,防災を目的とした被告国の公的な判断であって,個々の専門家が発表した地震や津波についての「論文」や学会での「報告」類とは,目的,性質,そしてその重要性が根本的に異なるものである。そして,このような推進本部の目的,公的役割を踏まえれば,特に「長期評価」の信頼性を疑うべき根拠が示されない限り,「規制権限の行使を義務づける程度に客観的かつ合理的な根拠を有する科学的知見」であると認められ,原子炉施設の安全規制に取り入れるだけの信頼性があるというべきである。被告国は,複数の専門家の意見書をもって異論を唱えるが,結局のところ,一学者として,後から振り返って,その見解に賛同できない理由を,十分な根拠もなく,または自らの仮説に沿って述べるだけである。したがって,いずれの意見書も長期評価の知見としての信頼性を否定するには到底及ばないものという他ない。
・長期評価を決定論ではなく,確率論的安全評価に取り込む判断をしたとの国の主張は,イコール,何も対策をしないとの判断をしたことである。現実には,長期評価は,確率論的安全評価などいって対策を先送りにされることなく,長期評価の見解に基づいた対策が実際にとられてきていた。万が一にも事故を起こさないようにするために求められる高度の安全性と,それでも,その安全性を犠牲にしてでも対策を先送りにしたいという態度,この矛盾を何とか取り繕うために,確率論的安全評価という言葉でごまかそうとしているのが国の主張の実態でないか。このような国の姿勢はあらためて厳しく問われるべきである。
②損害総論
・リスクがないとも言い切れない中で、仮に自分や、家族、子供ががんや白血病になってしまったらどうするのでしょうか。そのときには誰かが責任をとってくれるのでしょうか。避難指示区域を設定した政府や、低線量被ばくならば安全だといった学者たちは、責任をとって、元通りに治してくれるのでしょうか。もし、被ばくの影響で、健康や生命が害された場合には、だれも元には戻せない、取返しがつかないからこそ、原告たちは避難したのです。そして、原告たちは、抱いた不安や恐怖は、決して何の根拠も無いものでもありませんでした。原告たちの以前の住居は、1990年のICRPの勧告の基準を超える程度の線量が観測され、いまだに計測した7地点では、いまだにそれを超えています。原告らが避難をしたこと、避難を継続していることには、十分に合理性があります。
・原告らが奪われたのは、これまで積み上げてきた福島での人生であり、そしてこれから生きるはずであった福島での人生です。その損害を踏まえれば、決してこの金額は高額なものではありません。次回期日には、原告らの意見陳述が予定されています。裁判所におかれましては、原告一人ひとりの声に耳を傾けていただき、原告らを慰謝するに足りる賠償金額がいくらなのか、後世の検証に耐えうる判断をしていただきたいと思います。
その後,被告国も,30分ほどかけて,国の責任がない理由について,法廷で説明しました。
被告国の法廷における説明内容は,以下のとおりです。
次回,原発被害者集団訴訟第2陣第15回裁判は,平成30年8月30日(木)午後1時半より,開かれます。
遂に審理が終結します。法廷は,これまでと異なり,千葉地方裁判所201号法廷です。
是非,傍聴にお越しください。
なお,今回の第14回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の報告集会配布書面を若干加筆した書面をご覧ください。