2019年04月04日
皆様ご存じのとおり,本年3月14日,千葉地方裁判所(民事5部高瀬順久裁判長)は,本件原発事故に対する国の責任を否定し,東京電力に対し4世帯9名へ合計約500万円の賠償を命じる判決を下しました。2世帯10名の原告の方々には,既払金を超える損害がないとして,一切の賠償を認めませんでした。
弁護団は,千葉県原発訴訟原告・千葉県原発訴訟の原告と家族を支援する会と連名で,福島原発千葉訴訟第2陣の判決に対し,本年3月14日,以下の声明文を発表しました。
声 明
1 本日、千葉地方裁判所民事第5部(髙瀬順久裁判長)は、福島原発被害集団訴訟千葉二陣について、判決を言渡した。
この訴訟は、2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、「本件原発事故」という。)により、福島県内から千葉県内に避難を強いられた原告6世帯19名が、本件原発事故を起こした国と東京電力ホールディングス株式会社を被告として、提訴したものである。
原告らは、被告らの法的責任を明らかにするとともに、事故によって被った損害の賠償として、総額約2億4000万円余の支払いを求めている。本件原発事故については、損害賠償等を求めて、全国各地で約30の国賠集団訴訟が提起され、既に、全国で6つの地裁判決が出され、本日の千葉地裁2陣判決は、本年2月20日の横浜地方裁判所判決に次ぐ7例目であった。
2 本日の千葉地裁判決は、本件原発事故に対する国の責任を否定するもので、極めて遺憾と言わざるを得ない。同じく千葉地裁が、一昨年9月22日に全国で唯一国の法的責任を否定する判決を言い渡していたところ、本判決は同判決とほぼ同様に、福島第一原発の敷地高さを超える津波の到来の予見可能性を認めておきながら、人的物的資源の有限性等を強調した上で、結果回避義務や回避可能性を否定した。同じ千葉地裁で、原告ら被害者の生命や身体の安全性をかえりみることなく同じ論理をもってして、再度国の責任を否定したことは、これまで前橋、福島、京都、東京及び横浜の各地裁が正当に認定した国の加害責任を断罪する判断を、再び否定する極めて不当なもので、その理不尽に対し強く抗議する。
3 本日の判決は、損害論については、区域外避難者とされる原告に対しても、認容額自体は私たちの求めるものには遠く及ばないものの、一部の原告に対して、これまでの賠償基準の不十分さを認め、これを超えて損害賠償を命じた。一方で、半数以上の原告の請求を棄却しており、これ自体、中間指針に追従したもので、到底承服できる内容ではない。
4 2011年3月11日の原発事故から既に8年以上が経過しているにもかかわらず、本件原告らをはじめ、故郷に帰ることが出来ない原発被害者は未だに5万人ともいわれる異常な状況は、史上最大の公害とされる原発事故の恐ろしさを端的に示すものをいうべきである。
私たちは、国及び東電に対し、同じ原発事故避難者である原告ら全国の原発被害者(福島の滞在者も含む)を、避難区域によって分断するような中間指針を改め、すべての被害者が再び事故前の平穏な生活に戻れるための実効ある損害賠償の枠組みを、立法を含めた抜本的措置の構築に早急に着手することを強く求める。
5 私たちは、今回国の責任を否定したこの理不尽な判決に対し、これを覆すべく、新たな決意をもって、原発被害の完全賠償が実現するまで、今後とも総力を挙げてたたかう。
3月14日の千葉地裁判決を受け,弁護団は,短い期間で原告の方々と控訴の可否につき協議しました。
その結果,3月27日,4世帯17名の原告の方々について,控訴し,東京高等裁判所(東京高裁)の判断を仰ぐことにいたしました。東京電力も,3月28日,賠償を命じられた4世帯9名全員の原告に対し,控訴をしました。
福島原発千葉訴訟第2陣は,今後,東京高等裁判所に舞台を移します。弁護団・東京電力・国各々が,更なる主張立証を行った後,東京高裁による判断を受けることとなります。
もっとも,東京高裁での弁論がいつ開かれるのか等スケジュールは全く未定です。東京高裁でのスケジュールが判明しましたら,ホームページ等適宜の方法で,お伝えいたします。