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2021年03月31日

福島原発千葉訴訟第一陣 最高裁による審理へ ~一審原告ら・東京電力・国が上告~

福島原発千葉訴訟第一陣(控訴審)は,福島第一原発事故によって千葉県に避難された17世帯43名の一審原告の方々が,国と東京電力に対して損害賠償責任を求めている裁判です。

新聞報道等でご存じのとおり,東京高等裁判所第22民事部は,本年2月19日,国の責任を認めた上で,以下の概要の判決を下しました。

 ① 国(経済産業大臣)は,東京電力に対し,技術基準適合命令を発しなかった。この規制権限不行使は,国家賠償法上,違法である。国は,この規制権限不行使によって生じた損害を,賠償する義務がある。

 ② 東京電力は,一審原告らに対し,既払金(※東京電力が,一審原告の方々へ,既に賠償金として支払った金銭です)を除き,合計約2億7800万円を賠償する義務がある。このうち合計約1億3500万円に関し,国は,東京電力と連帯して,一審原告らへ賠償する義務がある。

      ※一審原告の一部の方々の控訴方針により,国と東京電力の賠償金額に違いが発生しました。

 ③ 避難生活に伴う慰謝料は,基本的に月額10万円として,特別の事情があれば1ヶ月あたりの賠償額を増額する。避難生活に伴う慰謝料の発生には終期があり,その終期は次のとおりとする。

  ア 帰還困難区域・旧居住制限区域・旧避難指示準備区域からの避難者 ⇒ 平成30年3月まで

  イ 旧緊急時避難準備区域からの避難者 ⇒ 平成24年8月まで(学生等については平成25年3月まで)

  ウ 旧屋内退避区域等からの避難者 ⇒ 平成23年9月まで

  エ 避難生活中に死亡した方 ⇒ 亡くなった時まで

 ④ 様々な生活上の活動を支える経済的,社会的,文化的環境等の生活環境がその基盤から失われた場合や,居住地周辺の地域がある程度は復興を遂げたとしても,生活環境がその基盤から大きく変容した場合には,それまで慣れ親しんだ生活環境を享受することができなくなり,それにより精神的損害を被った。また,元の居住地への帰還を果たすべく暫定的な生活の本拠における生活を継続するか,帰還を断念するかの意思決定をすることが可能となるが,このような意思決定をしなければならない状況に置かれること自体や,暫定的な生活の本拠における生活を将来にわたって継続すること又は帰還を断念することによる精神的損害を観念することができる。これらの精神的損害は,避難生活による慰謝料とは別に賠償されるべきである。この賠償額の考え方は,次のとおりである。

  ア 帰還困難区域からの避難者 ⇒ 精神的損害は大きい(1000万円。個別の事情を勘案して700万円)

  イ 旧居住制限区域及び旧避難指示準備区域からの避難者 ⇒ 相応の精神的損害あり(個別の事情も勘案して50万円~400万円)

  ウ その他の避難者 ⇒ 個別の事情を勘案して賠償の有無及び額を定める

 

以上が,東京高等裁判所第22民事部が本年2月19日に下した判決の概要です。

国の責任を認めた高等裁判所の判決は,2020年9月30日の仙台高等裁判所判決に続き,2件目です。東京高等裁判所第22民事部は,国の責任を否定した千葉地方裁判所民事第3部判決を破棄し,国を断罪しました。

もっとも,一審原告のうち37名の方々は,最高裁判所による審理を求めて,上告をしました。既払金の充当方法(世帯間での融通や,精神的損害と財産的損害での融通を認めたこと)等東京電力による賠償金額につき,東京高等裁判所第22民事部の判断を受け入れることができなかったためです。東京電力と国も,本年2月19日の東京高裁判決を不服として,最高裁判所による審理を仰ぐため,上告をしました。

 

先行する2020年9月30日の仙台高等裁判所判決・本年1月21日の東京高等裁判所第7民事部判決(群馬訴訟)も,最高裁判所による審理を仰ぐことになっております。そのため,国の責任に関して,最高裁判所は,先行する2つの高等裁判所の判決と併せて,統一して判断を下す見通しです。国の責任に関する最高裁判所の審理は,これまでの千葉地裁民事3部や東京高裁第22民事部と異なり,当事者が出頭する「口頭弁論」が開かれない可能性もあり,口頭弁論が開かれたとしても1回の見込です。

一方,東京電力による賠償金額に関して,最高裁判所は,福島原発千葉訴訟第一陣につき,自ら判断を下すか(上告棄却又は破棄自判),もしくは,一定の見解を示した上で,東京高等裁判所へ審理をさせる(破棄差戻し)見通しです。口頭弁論の回数は,国の責任に関する審理同様,開かれない可能性もあり,開かれたとしても1回の見込です。

 

なお,本年2月19日の東京高裁判決を踏まえ,当弁護団らによる声明文は,以下のとおりです。

声明文

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