2016年09月09日
原発被害者集団訴訟第2陣とは,いわゆる区域外避難者と呼ばれている6世帯20名の原発被害者が,東京電力と国に対し,原発事故による損害賠償を求めている裁判です。
既に21回審理を行っている「原発被害者集団訴訟」とは,別の裁判です。
原発被害者集団訴訟第2陣第3回裁判が,平成28年8月29日(月)午前10時半より,千葉地方裁判所601号法廷にて,行われました。
傍聴席は,概ね埋まっておりました。
第3回裁判では,当弁護団員が,提出した原告ら第2準備書面と第3準備書面の概要を,以下のとおり,法廷で説明しました。
1 原告ら第2準備書面について
国の規制権限不行使に関する5つの最高裁判例をもとに,本件に妥当する違法性の判断枠組みについて主張するものです。
5つの最高裁判例を踏まえると,本件でも,①被害法益の性質,重大性,②被害の予見可能性,③被害の結果回避可能性,容易性,④規制権限行使への期待可能性という,4つの共通の要素に基づき,国の規制権限不行使の判断がなされるべきです。
本件では特に,保護されるべき被侵害法益が国民の生命身体という重大な法益ですので,行政の「裁量」は問題とならず,「適時にかつ適切に」規制権限を行使することが要請されます。
2 原告ら第3準備書面について
我が国の原子力事業体制が国策民営の下で進められてきたことを明らかにします。
我が国の原子力事業は,何もない状況から,米国の原子力政策の転換と呼応して,被告国の主導によりスタートしました。この原子力委員会が作成した国家計画により,原子力開発事業が計画的に拡大されました。民間における原子力の商業利用について,被告国がその導入コストを負担してきました。
一方で,原発推進の過程には,障害もありました。その一つが原発の立地反対運動です。しかし,いわゆる「原子力ムラ」による原発安全キャンペーンにより,反対運動を抑えてきました。
我が国の原子力発電事業は,被告国の強い原発推進政策に基づく,積極的かつ強大な支援無しには成り立ちえませんでした。
被告国は原子力事業を推進することで,いわば自ら原子力発電所における事故の可能性・危険性を創出して来たのですから,本件事故の責任について,被告東電も被告国も同様に責任を負うべきです。
次回,原発被害者集団訴訟第2陣第4回裁判は,本年10月20日(木)午前10時半より,今回と同じ千葉地方裁判所601号法廷にて開かれます。
なお,今回の第3回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の報告集会配布書面をご覧ください。