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2016年10月24日

原発被害者集団訴訟第2陣 第4回裁判のご報告

原発被害者集団訴訟第2陣とは,いわゆる区域外避難者と呼ばれている6世帯20名の原発被害者が,東京電力と国に対し,原発事故による損害賠償を求めている裁判です。

 

既に22回審理を行っている「原発被害者集団訴訟」とは,別の裁判です。

 

 

 

原発被害者集団訴訟第2陣第4回裁判が,平成28年10月20日(木)午前10時半より,千葉地方裁判所601号法廷にて,行われました。

 

傍聴席は,これまで3回実施された裁判と異なり,空席が目立ちました。 

 

 

 

第4回裁判では,当弁護団員が,提出した原告ら第4準備書面と第5・6準備書面の概要を,合計約20分ほどかけて,法廷で説明しました。

 

 

法廷で説明した内容を,骨子に絞ると,以下のとおりです。

 

 

 

1 原告ら第4準備書面について

 

 

・本訴訟で原告らが立証すべきことは,本件事故を原因として,「低線量被ばくがもたらす健康影響の危険性に対して、通常であれば、不安や恐怖を感じて避難を選択し、避難を継続すること」が相当といえるということです。あくまで避難を選択すること」,その「選択」という判断行為が本件事故と因果関係があるということを立証しています。

 

 

・低線量被ばくによって健康に悪影響が生じることは,明らかです。本件事故に伴う放射性物質によって避難前の居住地域を汚染された原告らが,健康リスクを中心とするリスクを深刻に受け止め,強い恐怖・不安を抱くことは自然かつ合理的なものです。

 

 

・中間指針において設定された年間20mSvという避難指示基準は,放射線の健康影響についての科学的知見に依拠せず,政治的・政策的判断に基づくもので,「暫定的」に基準を定めたに過ぎません。中間指針は,本訴訟において賠償基準にはなりえず,それぞれの被害に応じた賠償全額が,認められるべきです。

 

 

 

2 原告ら第5・6準備書面について

 

 

・国の規制権限発動を義務付けるにあたって,どの程度の予測・予見が必要であるかという点について,原告らは,福島第一原発の原子炉建屋周辺の浸水しうるO.P.+10m以上の津波の発生,それによる電源喪失による冷却機能の喪失の“可能性”についての予見があれば,十分だと主張している。

 

 

・被告国は,地震・津波等の知見について,情報収集・調査義務を負っている。これを前提とすべきであり,被告国は,最先端の知見を含め見聞きできるあらゆる知見を認識していたもの,あるいは認識すべきだったとして,判断されるべきである。

 

 

・1997年3月,4省庁報告書(太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査報告書)と7省庁手引き(地域防災計画における津波防災対策の手引き)が,まとめられた。これらは,既往最大津波と現在の知見に基づいて想定される最大地震による津波を比較し,安全側の発想から,より大きい方を対象津波として設定するという津波予測の手法を採るという,これでまで既往最大津波だけを対象津波としていた,津波想定手法からの脱却を求めるものであった。

 

 

・2002年2月,津波評価技術(土木学界・原子力土木委員会・津波評価部会「原子力発電所の津波評価技術」)が公表された。津波評価技術が行った津波シミュレーションの手法は,当時の最高水準の技術に基づくものであった。一方で,その策定過程や想定した津波・領域分けには,①策定のプロセスには公正・公平・公開の観点から大いに問題があり,②文献記録に残っているわずか400年間の既往津波しか考慮されておらず,③恣意的に福島沖を想定から外しており,問題があった。

 

 

・2002年7月,長期評価(当時の総理府が設置した地震調査研究推進本部「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」)が公表された。長期評価は,津波地震は日本海溝付近のどこでも発生する可能性があると考え,M8ラスの大地震の発生確率が,今後30年以内の発生確率は20%程度,今後50年以内の発生確率は30%程度であるとの推定を示した。

 

 

・2006年,溢水勉強会が,被告国(原子力安全・保安院)とJNESと被告東京電力ら電力事業者により立ちあげられた。溢水勉強会の検討結果により,被告東京電力及び被告国は,津波を原因として全電源喪失に至る可能性を認識でき,福島第一原子力発電所での10mを超える高い津波の危険性を認識していた。

 

 

・遅くとも溢水勉強会が行われた2006年,被告国及び被告東京電力は,地震による巨大津波の発生のみならず,津波による福島第一原発の原子炉建屋周辺の浸水,それによる電源喪失による冷却機能の喪失,その結果としての苛酷事故についても予見し,そのリスクを認識していた。

 

 

 

 

 

 

次回,原発被害者集団訴訟第2陣第5回裁判は,本年12月8日(木)午後1時半より,今回と同じ千葉地方裁判所601号法廷にて開かれます。

 

 

 

なお,今回の第4回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の報告集会配布書面をご覧ください。

 

 

 

20161020 報告集会配布資料

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