原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団 原発被害救済千葉県弁護団

藤井・滝沢綜合法律事務所

〒260-0013
千葉県千葉市中央区中央3丁目4-8
コーノスビル5階

TEL:043-222-1831

原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団

トップ>原発被害者集団訴訟第1回専門家証人尋問(第15回裁判)のご報告

2015年08月14日

原発被害者集団訴訟第1回専門家証人尋問(第15回裁判)のご報告

当弁護団は,18世帯47名の原発被害者(以下「原告」といいます。)の方々の原発事故被害による損害賠償を求めて,東京電力と国を被告とした原発被害者集団訴訟を提起しています。

原発被害者集団訴訟第1回専門家証人尋問(第15回裁判)が,平成27年7月10日(金)午前10時半から午前12時,午後1時半から午後3時半まで,実施されました。

150名以上の傍聴券を求めて抽選に並んだこともあり,傍聴席は,前回同様,満席でした。

午前の裁判では,元国会事故調査委員である田中三彦氏が,法廷で,原告側代理人弁護士の質問に対し,ご回答くださいました。

田中三彦氏は,「今回の福島第一原発事故は,人災である。自然災害ではない。」「東京電力は,原発事故後に実施した柏崎刈羽原発での安全対策を,原発事故前にやろうと思えばやれた。やる気があるかないかの問題だった。」「国は,規制の虜となり,津波対策を事業者任せとし,津波対策について全く無策だった。」と,国や東京電力の態度を批判しました。

午後の裁判では,政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会元長期評価部会長である島崎邦彦氏が,法廷で,原告側代理人弁護士の質問に対し,ご回答くださいました。

島崎邦彦氏は,「2002年7月に公表した長期評価(三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について)によれば,福島沖を含めた日本海溝のどこであっても,明治三陸津波程度の大規模な津波地震が起こりうることが分かっていた。」,「阪神淡路大震災の反省から,長期評価が公表された。この長期評価に基づいて計算すれば,福島沖でo.p(基準海水面)+15.7mの津波を想定できた。」「どの程度の津波が発生するかは予測できていた。それに対して,有効な対策を立てることができたはずである。」と,田中三彦氏と同様,国や東京電力の態度を批判しました。

次回は,東京電力と国が,上記証言をした田中三彦氏と島崎邦彦氏に対して,反対尋問を実施します。

第2回専門家証人尋問手続(第16回裁判)は,平成27年8月25日(火)午前10時及び午後1時半より,千葉地裁601号法廷にて,実施されます。法廷は,前回と異なり,201号法廷ではないので,ご注意ください。

次回も,傍聴席は抽選となりますので,傍聴をご希望の方は,お早めに,千葉地方裁判所1階ロビーへお越しください。 

なお,第15回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,下記のとおりです。

(1) 当弁護団の証拠の提出

  ★証拠の提出
    〇提出した主な証拠
       崎山比早子先生の追加意見書,地震・津波対策に関する専門調査会報告参考図表集の抜粋(内閣府中央防災会議作成),柏崎刈羽原発の安全対策(被告東京電力作成)
 
  ★意見書の提出
    ○主張整理項目案について(被告国の責任)
    ○上申書(DVD上映)
 
   
(2) 被告東京電力の主張や証拠の提出
    ★被告東電共通準備書面(8)(過失論について)の陳述   
      ○概要
        ① 公益社団法人土木学会が平成14年に公表した「原子力発電所の津波評価技術」(以下「津波評価技術」といいます。)は,本件事故前,「原子力発電所の設計基準としていかなる津波を想定すべきか」という観点から策定された,津波評価方法を体系化した唯一の基準である。
           津波評価技術は,国際的にも十分な科学的合理性を有するものとして認められている。
        ② 津波評価技術において,福島県沖海溝沿い領域は,大きな地震・津波をもたらす場所として設定されていなかった。
           被告東電は,我が国において定着し国際的にも認められている津波評価技術に基づき,本件原発の津波対策を講じ,最新の科学的・専門的知見についても評価・検討の上で必要な対策を講じてきた。津波の想定を2回見直し,「長期評価」(文部科学省地震調査研究推進本部が平成14年に発表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」)の見解に対しても,専門的・科学的な検証を行い,対処していた。
        ③ 被告東電は,代替注水,耐圧強化ベント,タイラインの敷設等具体的なアクシデントマネジメント対策も講じていた。
        ④ 原告らは,「本件原発の敷地高を超えて建屋内に浸水を及ぼし得る程度の津波」という,仮想的な津波を予見できれば,本件事故発生について過失(注意義務違反)責任を問うことができる,と主張する。
           しかし,原告らが主張する仮想的な津波は,実際に生じた本件津波とは程度も規模も異なる。仮想的な津波によって,いかなる場合に全電源喪失という本件事故と同様の事象に至るか,全く不明である。
           さらに,原告らは何らかの事象によってシビアアクシデントに至る可能性の認識さえあれば良いと主張するが,実際に生じた事象から離れて観念的な予見可能性を問題にすることは誤りである。
        ⑤ 本件で問題となるのは,長期評価の見解等により得た知見が,「被告東電に客観的かつ合理的根拠をもって具体的な法益侵害の危険性を予見させるものであったか否か」である。
           本件事故時点における最新の科学的知見,過去の記録,統計学的見地からも,合理的に想定できない自然現象について,被告東電が予見すべき義務はない。
        ⑥ 津波評価技術は,公正な手続の下,策定された。
           津波評価技術の考え方は,地震・津波の専門家による検討を経て,4省庁報告書(農林水産省構造改善局ら4省庁が,平成9年に7省庁手引きも取り込んでとりまとめた「太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査」)を一歩進め,実用に耐えるものとして整備したものである。実際,津波評価技術は,本件事故以前における原子力発電所の安全評価に当たっての評価方法として,広く用いられていた。原告らが主張するような恣意的な計算操作も行われていない。
        ⑦ 原告らは,以下の㋐~㋒により,平成14年までに,被告東電が巨大地震の発生と津波襲来による本件原発の全電源喪失を予見し得たと主張する。
              ㋐ 貞観津波に関する知見の進展
              ㋑ 平成3年の補機冷却水系海水配管の破断事故
              ㋒ 長期評価
            しかし,上記㋐は,基本的には仙台平野における津波の痕跡高等を分析していたに過ぎない。また,被告東電は,上記㋑を踏まえて,非常用ディーゼル発電機室入口扉の水密化等各種必要な対策を講じてきた。上記㋒は,そもそも本件地震を予見したものではなく,政府の中央防災会議により具体的な防災対象として採用されたものでもない。上記㋒の見解は,本件事故前に確立された科学的認識であったといえなかった。
            また,原告らは,以下の㋓~㋘により,平成18年までに,被告東電が巨大地震の発生と津波襲来による本件原発の全電源喪失を予見し得たと主張する。
              ㋓ 明治三陸地震についての知見の進展
              ㋔ 土木学会・津波評価部会による地震学者に対するアンケート
              ㋕ スマトラ沖地震津波とマドラス原発事故の発生
              ㋖ 溢水勉強会
              ㋗ マイアミ論文
              ㋘ 耐震設計審査指針の改訂
            しかし,上記㋕は,本件地震とは性質が全く異なるし,上記㋖での検討結果に対し,保安院も「安全性に問題ない」としている。上記㋗はあくまで試行的な解析の域をでるものではない。
            上記㋐~㋘いずれを踏まえても,被告東電が,本件津波ないしこれと同規模の津波発生に関して予見できたとはいえない。
        ⑧ 本件事故時,本件原発の電源は,技術基準省令が規定する「多重性及び独立性」または「多様性及び独立性」の要件を備えていた。内部溢水対策を講じるという見地から,必要箇所の水密化を含む様々な溢水対策を実施していた。本件原発各号機に対し法令等に準拠した適切な量の直流バッテリーを備え付けていた。本件原発の海側エリアの海水ポンプの設置高さも,津波評価技術及び最新の知見に基づき十分な裕度をもって設置され,浸水対策も講じられていた。
           代替注水,耐圧強化ベント,タイラインの敷設等具体的なアクシデントマネジメント対策も講じていた。耐圧強化ベントは,フィルタ装置付のベントと同等程度の効果を有するものである。
           したがって,被告東電は,可能な対策を全て行っており,何ら違法ではない(結果回避義務違反がない)。
 
  ★証拠の提出
      〇提出した主な証拠
         福島原子力事故調査報告書(被告東京電力作成),原子力発電所の津波評価技術附属編(土木学会原子力土木委員会津波評価部会作成),耐震指針検討部会報告書(原子力安全委員会作成)

(3) 被告国の主張や証拠の提出

    ★第13準備書面の陳述   
      ○概要
        ① 基本設計ないし基本的設計方針という概念は,原子炉施設の安全性に関わる設計の基本的考え方である。
           福島第一発電所での津波対策に関する基本設計ないし基本的設計方針とは,同発電所の敷地高さを超えて津波が到来しないことを前提としている。
        ② 原告らは,本件原発事故を防ぐために,以下の対策を講じるべきだったと主張している。
            ㋐ 建屋や非常用電源設備重要機器の水密化
            ㋑ 配電盤等の配電設備の多様化,分散配置
            ㋒ 直流電源の確保
            ㋓ 可搬式電源設備(電源車等)の配置
            ㋔ 冷却機能の確保
           しかし,上記㋐・㋑・㋓・㋔は,福島第一発電所での津波対策に関する基本設計ないし基本的設計方針を変更しなければいけないものである。上記㋒は,法律によって規制されていなかったシビアアクシデント対策である。
           また,原告らは,上記㋐~㋔とは別途,本件原発事故を防ぐべく,シビアアクシデント対策を講じるべきだったとも主張している。しかし,シビアアクシデント対策は法律による規制の対象外であったため,被告国は,原告らが主張するシビアアクシデント対策を講じるよう,技術基準適合命令を発令することはできなかった。
        ③ 経済産業大臣は,基本設計ないし基本的設計方針の安全性に関わる事項を是正するために,電気事業法40条に基づく技術基準適合命令を発令することはできなかった。シビアアクシデント対策も法律によって規制できなかった。
           原告らが主張する対応をしなくとも,本件原発事故前の被告国の対応は,違法でない。
 
  ★証拠申出書(佐竹健治教授)の提出 
     裁判所に対して,「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」に基づいても,本件地震及びこれに伴う津波と同規模の地震及び津波の予見可能性が認められないこと等を立証するために,地震調査研究推進本部地震調査委員会長期評価部会海溝型分科会委員である佐竹健治教授の話を聞くように,申入れしました。
   
    ★証拠の提出
      〇提出した主な証拠
         佐竹健治教授の意見書,経済産業大臣による指示書(電気事業者に対する本件事故を踏まえたシビアアクシデント対策の実施)
   
    ★意見書の提出
     ○意見書(裁判所提示「被告国の責任論に関する主張整理項目案」に対して)
原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団 原発被害救済千葉県弁護団

私たちは千葉県の弁護士からなる弁護団です。

原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団 原発被害救済千葉県弁護団

説明会や相談会を定期的に実施しております。詳細はこちらから。

原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団 原発被害救済千葉県弁護団

損害賠償請求の手続について、具体的にどのような流れで手続が行われるかを簡単にご説明いたします。

原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団
原発被害救済千葉県弁護団