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2023年06月21日

福島原発千葉訴訟第二陣 第13回口頭弁論期日のご報告

福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)は,福島第一原発事故によって千葉県に避難された6世帯17名の方々が,国と東京電力に対して損害賠償責任を求めている裁判です。第1審である千葉地方裁判所民事第5部は,平成31年3月14日,国の責任を否定する判決を言い渡しました。現在,福島原発千葉訴訟第二陣の審理は,千葉地裁から,東京高等裁判所第16民事部へ移っております。

 

福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)第13回口頭弁論期日が,令和5年6月21日(水)午後2時より,東京高等裁判所101号法廷にて,行われました。傍聴席は満席でした。

 

 

まず,裁判官が交代したため,弁論の更新手続が行われました。

次に,第13回口頭弁論期日は,結審日,つまり審理を終結させる日でした。そこで,東京高裁第16民事部における最後の意見陳述として,一審原告の方1名と弁護団員5名の意見陳述を,合計50分程度かけて,法廷で行いました。 一審原告の方1名と弁護団員5名が意見陳述した概要は,下記のとおりです。なお,東京電力も国も,意見陳述を行いませんでした。

 

そして,東京高裁は,福島原発千葉訴訟第二陣の判決言渡日を,以下のとおり,決定しました。

日時:令和5年12月22日(金)15時

場所:東京高裁101号法廷

 

なお,今回の控訴審第13回口頭弁論期日において,一審原告ら・東京電力・国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の書面をご覧ください。

 

230621 控訴審第13回裁判のご報告

 

一審原告本人(原告番号2)

・昨年の6月17日、この訴訟と同様の訴訟において、国の責任を否定する最高裁判所の判決がでました。細かい話はわかりませんが、津波も予見されていたにもかかわらず、国はその対策を東電に命じませんでした。にもかかわらず、その国に法的責任が無いと判断されたのはおかしいと思います。高等裁判所でも緻密な検討をした上で、国の責任を認めた判決が出ていました。最高裁判所における判決でも三浦守裁判官による緻密な反対意見がでておりました。裁判所は国に忖度をしたのではないかと思わざるをえません。

 

・福島の子ども達が、通常ではありえない確率で、小児甲状腺がんにかかっているという情報を耳にするようになりました。福島に居続けて健康を害した責任は私たち親が負うしかありません。避難の決断には時間がかかりましたが、子供たちのことを考えて、私たち家族は避難をしました。当時は、迷いながらの決断でしたが、今になって、避難を決断してよかったと思っています。

 

・私たちはいわゆる避難指示対象区域外として賠償において、区域内と区別されてきました。たった数センチ距離が違っただけで、賠償額が数百万円も変わるのはおかしいと思います。私の住んでいた地区はホットスポットが30箇所以上あり市役所は場所も把握していました。しかし、私たちには、ホットスポットは教えられていませんでした。その中で子供たちと一緒に住み続けることはとても出来ませんでした。もう一度ききますが、裁判官の皆さんは子供とそこに住むことができますか。区域内でも外でも避難をせざるをえないのは一緒です。であれば、区別なく同様に賠償されるべきではないでしょうか。

 

 

当弁護団

・これまで全国各地で、国の責任に関する多くの争点について議論をたたかわせてきました。ところが最高裁は、そのほとんどについて判断を避けました。異様な判決だったと思います。私は、優秀な調査官があの多数意見に関わったとはとうてい思えません。三浦守反対意見こそ、多数意見に与しなかった三浦判事と調査官の合作と思われ、第2判決とも言うべきです。岡山地裁、福島地裁郡山支部と、最高裁判決に引きずられた判決が相次いで出されました。裁判官の独立や矜持が問われています。本件訴訟は差し戻し審ではなく、手続き上の拘束力はありません。この事件の判断の分水嶺は、証拠に基づく動かぬ事実を前に、司法の独立と権威を守る立場に立つかどうかなのです。

 

・本訴訟において,国の責任に関する最大の争点は,予見可能性,特に地震調査研究地震本部が2002年に策定した,いわゆる「長期評価」の信頼性にあります。この長期評価は,日本海溝寄りのどこにおいても,津波地震(地震の揺れは小さくとも巨大な津波を生む低周波地震)が発生しうると明言しています。個々の専門家の意見とは異なる,公的な性格と重要性を持つものです。策定プロセスを見ても,「長期評価」が客観的かつ合理的な地震学の根拠に裏付けられた知見であることは疑いようがありません。最高裁判決の三浦反対意見においても,「この種の研究において様々な仮説や個人の見解が示されることは当然であるが,本件長期評価が,それらを含め,最新の知見を用いて,具体的な検討と審議を経て,多くの専門家の賛同により取りまとめられたこと自体,その信頼性を高めるものということができる」として,多くの専門家の議論を経たという策定プロセスを重視し,防災対策における信頼性を高く評価しています。

・規制当局には,原子力事業者が利益を重視するあまり安全対策を怠らないよう不断に注視しつつ,安全寄りの指導・規制をしていくことが期待されていたといえます。ところが,保安院は,国自身が設置した地震本部が作成・公表した「長期評価」の重要性を認識していたにもかかわらず,東電の抵抗に屈し,単に「反対していた学者一人に問い合わせただけ」の簡単かつ不正確な報告を唯々諾々と受け入れるており,規制当局に期待される役割を果たさなかったものと言わざるを得ません。

 

・本件事故以前から水密化による対策が検討され実施されてきました。「建屋等の水密化」は「防潮堤等の設置」よりも実現可能な津波対策であると考えられます。安全裕度の観点からも,防潮堤のみ建設すれば中の建物や設備は何もしなくて良いなどという発想はなく,むしろ,防潮堤が機能しなかったことを想定し,防潮堤以外にも二重三重に防護措置を取ることが常識です。敷地高さを超える想定津波については,「防潮堤の設置」に限られず,「建屋等の水密化」による防護措置を採るのが合理的と考えられます。

・福島第一原発においては,敷地の浸水に対する防護は全く想定されていませんでした。それにもかかわらず,3号機に見られるように,タービン建屋の駆体,その大物搬入口や建屋内の間仕切りは,浸水深5mに達する本件津波に対しても相当程度の防護機能を果たしました。もし,国が,敷地高さを超える津波による福島第一原発の全電源喪失を予見したときに,東電に対し規制権限を適切に行使し,想定津波を前提とした「建屋等の水密化」対策を講じさせていたとすれば,本件事故の回避が十分に可能だったと推認できます。

 

・公衆被曝の線量限度につき、日本国内において法的根拠を有するものは、年間1mSvという基準のみであり、被告国が主張するような、ICRP2007年勧告は、本件原発事故の時点においては、採用されておりませんでした。そうだとするならば、本件訴訟における一審原告らの権利侵害の有無や避難・避難継続の合理性を検討する上では、年間1mSvという基準が採用されるべきです。放射線被害の特殊性は、放射線は目には見えず、また、その影響が直ちには現れないことです。目には見えない予測困難なリスクについて一般人がどのように受け止めるかに関わるリスク認知論の知見は、十分に参考にされるべきです。

・避難指示の策定に当たっては、十分に実際の線量やホットスポットが考慮されているわけではありませんし、避難指示区分をわずかでもずれれば賠償基準が全く異なるという自体も明らかに不合理です。裁判所においては、避難指示区分にかかわらず、損害論の論点について判断いただきたいと思います。

・原審では、同一世帯内では、名目上うち一人の原告に対する既払金であっても、世帯の構成員全員の損害にてん補するとして、原告らの全員の関係で充当するという世帯間充当が行われております。この充当方法は、他人への支払いであっても、家族であれば充当できるという極めて前近代的な価値観を前提とした充当方法であり、個人主義を定めた憲法13条の理念にも反する明らかに不合理な充当方法です。直ちに是正されるべきと考えます。

 

・昨年6月17日の最高裁判決が現実に存在している以上、本件判決を言い渡す貴裁判所がこれを無視することはできないことは当然です。しかしながら、争点の判断を回避し「想定外」とのひとことで国の責任を否定した多数意見と、全ての争点を正面から受け止め詳細な検討を経てこれを肯定した三浦守裁判官反対意見の相反する判決内容を冷静に比べて評価するとき、法律家としてのセンスを持つものなら、誰しもが後者に説得力を見出すでありましょう。現に、昨年の最高裁判決直後に示された報道記事や社説、判例解説などは押しなべて、多数意見に疑問を呈するものとなっていることは周知の事実です。

・本件原発事故後12年と3か月を経過した現在でも、本件原告らをはじめ数万人の避難者・被害者が全国に存在するという事実をここで今一度噛みしめていただきたい。この方々は、いずれも事故前にあった明るく平穏な当たり前の生活を突然失ったのです。以降避難生活おいて受け続けている経済的困窮、心身の健康の悪化などの被害は筆舌に尽くしがたいものです。裁判官の皆さま、このような被害が突然自らと家族にもたらされたとしたら、そのことを想像してみていただきたい。

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