トップ>福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審) 第5回口頭弁論期日のご報告
2021年04月22日
福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)は,福島第一原発事故によって千葉県に避難された6世帯17名の方々が,国と東京電力に対して損害賠償責任を求めている裁判です。第1審である千葉地方裁判所民事第5部は,平成31年3月14日,国の責任を否定する判決を言い渡しました。現在,福島原発千葉訴訟第二陣の審理は,千葉地裁から,東京高等裁判所第16民事部へ移っております。
福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)第5回口頭弁論期日が,令和3年4月21日(水)午後2時より,東京高等裁判所101号法廷にて,行われました。
傍聴席は,新型コロナウィルス感染対策防止のため,数に限りがあったものの,空席が目立ちました。
第5回口頭弁論期日では,まず,審理する裁判官3名のうち2名(裁判長以外)が交代したため,「弁論の更新」という手続を行いました。「弁論の更新」手続として,裁判所は,弁護団・東京電力・国に対し,「従前の主張を維持することで構わない」旨確認し,それぞれより承諾を受けました。
次に,東京電力代理人弁護士が,40分程度かけて,意見陳述をしました。陳述した意見の内容は,簡潔に述べると「多くの方々に,高い水準の賠償を実施してきた,実際の損害額を超える賠償を実施した」です。
その後,弁護団員2名が,一審原告の方々が今回提出した書面の要旨を,合計10分程度かけて,法廷で説明しました。以下は,弁護団員2名が法廷で説明した内容の概要を記載したものです。
なお,国は,意見陳述を行いませんでした。
第19準備書面(令和3年2月19日東京高裁判決に基づく一審被告国の責任論)
・一審原告らは,国の責任(規制権限不行使の違法性)を裏付ける核心的な主張として,次の3つを提示しました。
①規制権限不行使の違法性判断においては,省令62号4条1項の要件該当性の判断が前提として不可欠であること
②2002年「長期評価」には,前記4条1項を基礎付ける「客観的かつ合理的根拠」が存在し,その合理性は国の反論によって何ら揺らぐものではないこと
③前記「長期評価」に基づく予見可能性を前提とした場合,結果回避措置として,時間的にも費用的にも建屋等の水密化措置を講じない選択肢はないこと
・令和3年2月19日東京高裁判決は,いずれも概ね一審原告らの主張立証に沿って肯定したものであり,本判決の内容を精緻に検討していただければ,一審原告の主張も含めて本件事案におけるその判断の正当性は必ずご理解いただけるはずです。
・令和3年2月19日東京高裁判決は「長期評価に示された見解については,・・・津波評価技術と少なくとも同等の科学的信頼性を有していたのであるから,それにもかかわらず,原子炉施設についての規制権限行使の要件の具備に判断においてこれを基礎としないとすることは,いかなる科学的知見を基礎とするかが規制機関の専門家的判断に委ねられていることを考慮しても著しく合理性を欠く」と判示しました。また,保安院対応は極めて杜撰であり,上記高裁判決も「規制機関による検討としては,いささか不十分であって,保安院が」「福島第一原発の安全性の審査において長期評価に示された見解に依拠する必要がないと判断したことは,慎重な考慮に欠けるものであったといわざるを得ず」と判示しました。
損害論-一審原告第18準備書面の要旨説明-
・東電から主張されている世帯間の既払金の充当は,認められるべきではありません。その理由として,以下の5つを挙げることができます。
①権利や利益は,個人を単位として考えるという近代法の基本に反する
②「損害賠償請求権は個々人につき発生するものであるから,損害の賠償についても,世帯単位ではなく,個々人に対してなされるべき」(中間指針第3-6)との中間指針の記載にも反する
③家族であっても他人に対する賠償によりそれが慰謝されるということにはならない
④被害者側の過失を過失相殺において評価できるという判例法理と,弁済の充当は異なる
⑤夫婦・親子・親族の財産関係にまつわる法制度等は根拠とならない
次回,福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)第6回裁判は,令和3年7月14日(水)午前11時より,東京高等裁判所101号法廷にて,開かれる予定です。
今回の控訴審第5回口頭弁論期日において,一審原告ら・東京電力・国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の書面をご覧ください。