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トップ>福島原発千葉訴訟第1陣 控訴審 第1回口頭弁論期日のご報告 

2018年08月07日

福島原発千葉訴訟第1陣 控訴審 第1回口頭弁論期日のご報告 

福島原発千葉訴訟(※これまで「原発被害者集団訴訟」と表記しておりましたが,今後は,「福島原発千葉訴訟」と表記することに致しました。)第1陣(控訴審)は,福島第一原発事故によって千葉県に避難された17世帯43名の方々が,国と東京電力に対して損害賠償責任を求めている裁判です。第1審である千葉地方裁判所民事第3部は,平成29年9月22日,国の責任を否定する判決を言い渡しました。

 

 

福島原発千葉訴訟第1陣(控訴審)第1回裁判が,平成30年7月6日(金)午後2時より,東京高等裁判所101号法廷にて,行われました。

 

 

 

傍聴席は,満席でした。 

 

 

当日は,千葉弁護団員2名より,国の責任論と損害総論に関する意見陳述を,生業弁護団員(「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟弁護団)1名より応援弁論として意見陳述を,

そして,一審原告本人が法廷で意見陳述を,それぞれ行いました。

 

 

一審原告らが法廷で陳述した意見の概要は,以下のとおりです。

 

 

 

〇千葉弁護団員 国の責任論 意見陳述

 

・国の主張によれば,どれだけ原発の事故の危険性が示されたとしても,それが学会で異論がない等といった確立した知見に至るまで何らの対策も取る必要がない以上,その危険性が確立したものとなるまで,我々国民側でその危険を受け入れなければならないこととなる。事業者の人的物的資源など経済的な事情を,代替のきかない国民の生命と同じ土俵で考え,天秤にかけているのであり,その発想自体が許されるものではない。深刻な災害を引き起こす事故を万が一にも防ぐためには,国に規制権限を義務づける程度の予見は,「規制権限行使を義務づける程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見」があれば足りると考えなければならない。前橋,福島,京都,東京の各判決もいずれも同趣旨である。唯一,千葉地裁は,この矛盾した国の主張を無自覚なまま採用し誤った判断を行ってしまったものであり,まずこの前提の誤りから是正されなければならない。

 

・国の主張の基礎には,津波を想定するにあたって,既往最大を超えて想定しうる最大規模の地震津波を想定するという「長期評価」の考えを受け入れず,あくまで「既往最大の地震津波」で足りるとする考えがある。「既往最大の地震・津波」の考え方を正当として採用したのは,地震学の進展が未熟であった福島第一原発の当初の設置許可時を除けば,2002年「津波評価技術」公表後における保安院及び東電の福島第一原発における津波対策においてのみである。それ以外の局面においては,一般防災においても,原子力発電所の地震・津波対策においても,客観的かつ合理的根拠をもって「想定される最大規模の地震・津波」が考慮されてきた。「既往最大の地震津波」のみによる考えはすでに乗り越えられ,本件事故前から,既往を超える最大規模の地震津波の想定が求められていたのであるから,国の主張は根本的に誤っている。国は,「長期評価」の見解に対し,①推進本部の役割,立場の否定と,②当時の専門家の中に複数の異論があったこと,この2点において批判を展開し,その信頼性を貶めようとする。しかし,「長期評価」は国の機関たる地震本部の公的見解であり(客観的な根拠を有する科学的知見である),「長期評価」が地震・津波についての知見の進展を踏まえ,第一線の研究者が議論を尽くして作成されたものである。2002年「長期評価」に高度な信頼性が認められること,「長期評価」が「規制権限の行使を義務付ける程度に客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見」であることは,疑う余地がない。

 

・国は,「長期評価」の見解は,具体的な根拠を伴わず,単に理学的に否定できないレベルの知見にすぎないとして,決定論として取り込まずに,確率論的安全評価の中で取り入れる判断をしたと主張する。国の主張する「決定論ではなく確率論において取り扱う方針」とは,実際には何もしないことと同義である。国が「長期評価」を一切無視して,決定論として何ら取り入れることなく確率論的安全評価に取り入れると称して,実質的には「何もしない」との対応をとり続けたことは,「著しく合理性を欠く」ものと評価されるものである。

 

・他地裁の判決では,長期評価による2008年推計の結果を踏まえて建屋等の水密化や重要機器の高所配置等のいずれからの対策を取れば,本件事故を防げた可能性があるとして,結果回避可能性を肯定している。回避できなかった可能性があるなどとして,原告らにあたかも100%回避できたことの立証を求めるかのような判決をしたのは,唯一千葉地裁一陣訴訟の判決のみであるが,このような非現実的な不可能な立証を求める判決のおかしさは,他の地裁判決の判示により,浮き彫りになっているところである。

 

 

 

〇千葉弁護団員 損害論 意見陳述

 

・一審判決は、100mSvを超えない限り、がん発症のリスクが高まるとの確立した知見は得られていない等と認定をしていますが、そのような認定が誤っている。仮に受忍すべき線量があるとしても、少なくとも年間線量1mSv以下の線量であると考えられるべきです。原告らの避難元住所においては、当該線量を優に超えていると考えられ、したがって、原告らが避難を継続することに合理性があることは明らかです。

 

・原審裁判所は、現地の検証も行わず、原告らの被害の事実に基づき慰謝料の評価を行うことなく、加害者である国が作成した避難指示区分、中間指針ばかりを見て、慰謝料の額を決めたのです。裁判所において、本来重視されるべきなのは、放射線の届かない安全な会議室で作られた避難指示区分や経済的都合で作られた賠償基準ではないはずです。加害者である国が作ったルール、基準ではなく、原告たちの声を、自分の耳で聴いて、また、自ら現地の状況を体感して、生の事実を評価し、慰謝料額を認定していただきたいと思います。

 

 

 

〇生業弁護団員 意見陳述

 

・憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は・・・立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しています。本件原発事故は、わが国の歴史において前例のない被害をもたらしています。裁判所におかれても、憲法13条の趣旨を深く究明しその視座にたって、原告ら住民の被害に向き合って頂きたく期待します。

 

・「万が一にも深刻な災害が起こらないようにする」という伊方原発最判の示す法の趣旨を踏まえれば、福島地裁判決が判示したように、「客観的かつ合理的な根拠を有する知見」については、決定論に基づく規制の基礎に当然に据えられるべきものです。結論ありきで安易な原判決は、本控訴審において速やかに正されるべきです。

 

・裁判所が、わが国の歴史上前例のない本件原発事故に関する司法判断を担うに際して、原告らに留まらない多くの住民の原発事故被害にも心を致し、その被害をもたらした東電と国の責任を明らかにすることによって、憲法以下の法の求める正義を回復するという使命を果たされることを強く期待する。

 

 

 

〇一審原告 意見陳述

 

 

・避難前住居は、先祖代々が暮らした場所であり、私の代で離れることになったことは、本当に寂しくてなりません。たくさんの知人、友人とも離ればなれになってしまいました。先日、自宅を片付けに行きましたが、畳がくさったような悪臭で、カビも生えており、ひどい状態でした。本当に悲しいです。 現在も、住民はいまだに避難して各地にちらばっており、どこにいるかわからない人もたくさんおります。 高齢者のなかには、戻れず、福島県内の仮設住宅にいる人もたくさんおります。復興とはほど遠い状況なのです。裁判官の皆様、是非、避難前住居を見に来て下さい。見ていただければ、私達の気持ちがよくわかっていただけると思います。

 

・ 原発事故は、我々に長く苦しい避難生活を強いただけでなく、ふるさとを奪ってしまったのです。本件訴訟を提起してから5年以上が経ちました。国と東京電力は、一日も早く責任を認めて適切な賠償をするよう強く求める次第です。

 

 

 

 

その後,東京電力と国も,それぞれ意見陳述を行いました。

 

東京電力は,過去の裁判例やADR等で圧倒的多数の事件が中間指針等に基づき解決されている等,終始,中間指針や東電の賠償基準は合理的であることを意見していました。

 

 

国は,「津波評価技術」を用いた決定論的安全評価による津波対策を行ってきた中,「長期評価の見解」を決定論ではなく,確立論的安全評価に取り込んでいくと判断したことが,当時の理学的・工学的知見に照らして著しく合理性を欠いていない,本件原発事故前の工学的知見に照らして合理的に導き出される結果回避措置によって本件原発事故は回避できなかった等,終始,国に責任がないことを繰り返し述べていました。

 

 

 

 

次回,福島原発千葉訴訟第1陣(控訴審)第2回裁判は,平成30年11月16日(金)午後2時より,東京高等裁判所101号法廷にて,開かれます。

 

 

是非,傍聴にお越しください。

 

 

 

なお,今回の控訴審第1回口頭弁論期日において,一審原告ら・東京電力・国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の報告集会配布書面をご覧ください。

 

 

20180706 報告集会配布書面

 

 

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