2023年12月28日
福島原発千葉訴訟第二陣(控訴審)は,福島第一原発事故によって千葉県に避難された6世帯17名の方々が,国と東京電力に対して損害賠償責任を求めている裁判です。第1審である千葉地方裁判所民事第5部は,平成31年3月14日,国の責任を否定する判決を言い渡しました。
既に報道等でご存じのとおり,令和5年12月22日,東京高裁第16民事部は,国の責任を否定しました。また,東京電力に対する賠償を認めたものの,その認定損害額も極めて不十分なものにとどまっております。
同日,当弁護団は,以下のとおり声明しました。
声 明
本日、東京高等裁判所第16民事部(土田昭彦裁判長)は、福島第一原発事故損害賠償千葉2陣訴訟について判決を言い渡した。
この訴訟は、2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という。)により、福島県内から千葉県内に避難を強いられた原告6世帯19名(高裁判決時6世帯17名)が、千葉1陣訴訟に続いて2015年6月に、国と東京電力ホールディングス株式会社を被告として提訴したものである。
本訴訟の第一審である千葉地方裁判所は、2019年3月14日、被告東電に対する原賠法上の責任のみを認め、国に対する責任を否定し、双方が控訴して本日の東京高裁の判決を迎えたものである。
この間、昨年6月17日、千葉1陣、生業訴訟、群馬訴訟、愛媛訴訟につき、最高裁第2小法廷は、国の責任を否定する判決を言い渡したが、これには、原告側の主張にのっとって国の責任を明確に認める三浦守裁判官の反対意見が付されるという際どいものとなっていた。
そして、本件訴訟と同争点で争う同種原発事故国賠訴訟は、その後も続々と高裁判決が示されつつあるが、遺憾ながら、本年3月の仙台高裁、11月の名古屋高裁と同様、本日の千葉2陣訴訟東京高裁第16民事部の判決も、昨年の6月17日最高裁多数意見に追従するものとなった。
私たちは、本件控訴審の審理において、昨年6月17日最高裁判決後も、その多数意見の非論理性、不合理性を指摘して主張立証するともに、地震調査研究推進本部が2002年7月に公表したいわゆる「長期評価」に基づき福島第一原発の敷地高さを超える津波の到来を予見し、国が東電に対し的確に規制権限を行使して津波防護対策を講じていれば本件大津波による原子力事故を防ぐことができたとする三浦判事の反対意見の正当性を詳細に論証した。
しかしながら、本日の東京高裁第16民事部の判決は、最高裁多数意見に忖度しこれに追従して国の責任を否定したもので、まことに遺憾である。
また、いわゆる避難区域外からの避難者を多く占める本訴訟の原告らの救済についても、その認定損害額が極めて不十分なものにとどまっているのは、本件甚大な被害の実相を無視し、原告ら原発被害者への憲法13条による人権救済も否定したもので、重ねて遺憾と言わざるを得ない。
私たちは、本日の不当極まる判決を、怒りをもって強く非難するとともに、今後も各地の原発国賠訴訟の原告、弁護団、支援者らと連携を強めながら、来るべき上告審も含め、人権の救済を使命とする司法の役割の実現に向け闘いを続ける決意である。
2023年12月22日
千葉県原発訴訟原告と家族の会
原発被害救済千葉県弁護団
千葉県原発訴訟の原告と家族を支援する会