トップ>福島原発千葉訴訟第2陣結審~判決言渡日は,来年3月14日~
2018年10月24日
福島原発千葉訴訟第2陣とは,いわゆる区域外避難者と呼ばれている6世帯19名(現在の原告数)の原発被害者が,東京電力と国に対し,原発事故による損害賠償を求めている裁判です。
平成29年9月22日に判決が言い渡され,東京高等裁判所へ控訴した「福島原発訴訟第1陣」とは,別の裁判です。
福島原発千葉訴訟第2陣の第15回裁判が,平成30年8月30日(木)午後1時30分より,千葉地方裁判所201号法廷にて,行われました。
傍聴席は,満席でした。
第15回裁判では,当弁護団と原告の方々が,これまで行ってきた主張の総まとめとして,合計2時間30分程度かけ,必要に応じてパワーポイントを利用しながら,法廷において口頭で意見を述べました。述べた意見の一部を紹介すると,以下のとおりです。
(1)被告国の責任論1
・被告国は,原子炉等規制法及び電気事業法に基づく経済産業大臣の規制権限を,国民の生命,健康に対する危害を防止することを目的として,できる限り速やかに,適時かつ適切に行使されるべきだった。被告国は,被告東電に対し,津波による浸水から全交流電源喪失を回避するための措置を講ずるよう命ずべき規制権限を有しており,それにより原告らが主張する措置を講ずるよう命ずる権限を有していた。
・本件において,規制権限を行使するか否かにつき,被告国が強調する「裁量」はない。本件事故について被告国の責任を肯定した4つの同種訴訟の判決は,その規制権限不行使の違法性を判断するにあたって,的確な判示をしている。
(2)被告国の責任論2
・被告らの指摘する「長期評価」に対する異論がいずれも理由のないものであり,「長期評価」が公表された2002年の段階で,「長期評価」に基づいて速やかに津波対策を国から東電に義務づけるべきであった。
・被告国がこの「長期評価」の知見を過小評価し,あくまで決定論ではなく確率論的安全評価で取り入れていく(すなわち,「長期評価」に基づく対策を取る必要がない)と判断していたことが著しく不合理であった。
(3)被告国の責任論3
・2002年中に試算していれば,防潮堤設置,建屋等の水密化,非常用電源設備等の水密化,給気口の高所配置,シュノーケル設置等,さらには全交流電源喪失が生じた場合の可搬式電源車・ポンプ車等の配備といった多重防護対策を実施したとしても,本件事故まで十分間に合った。本件事故を防ぐことは可能だった。
・2002年7月31日の「長期評価」の公表から2011年3月11日の本件事故に至るまで,被告国は,被告東電から「長期評価」に基づく想定津波に対する対策が全く示されていなかったにもかかわらず,何らの具体的な実効性ある対応を取らなかった。この規制権限の不行使は,電気事業法の趣旨,目的,最新の科学的知見を踏まえて,適時にかつ適切に行使されるべきという技術基準適合命令の性質等に照らし,本件の具体的事情下において,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いていたものであり,国家賠償法1条1項の適用上違法というべきである。
(4)損害総論
・年間積載線量20ミリシーベルト以下であれば,「安心だ,健康リスクがない」等とは言えない
・避難指示の有無は、避難の合理性、避難継続の合理性、賠償額を検討する上で重視されるべきではない。原告らが、健康へのリスクを考慮して避難をしたこと、そして避難を継続していることは合理性が無いとはいえない。
・避難区域の区分を前提として、賠償額を区別した中間指針も参考にならない。避難の苦しみは、区域外区域内という理由では異ならないはずであり、避難、避難継続の合理性が認められる限り、避難区域の内外を問わず同様の賠償が認められるべきである。
(5)原告の方々による意見陳述
当弁護団員と原告の方々による意見陳述を終えた後,被告東京電力も,30分程度,意見陳述を行いました。意見陳述の概要は,以下のとおりです。
・中間指針等及びこれに基づく被告東電の賠償基準は,合理的かつ相当性を有する。
・直接請求に基づき,原告らへ既に支払った賠償で,本件事故の賠償は既に終えている。
これに対して,被告国は,法廷において,意見陳述を行いませんでした。
福島原発千葉訴訟第2陣は,8/30の審理を終えたことで,千葉地方裁判所における審理を終結しました(結審)。
そして,裁判所より,以下の日時に判決を言い渡す旨,告知されました。
「平成31年3月14日(木)午後2時」
3月14日の判決言渡日も,傍聴席は抽選となる見込みです。傍聴をご希望の方は,お早めに,千葉地方裁判所1階ロビーへお越しください。
なお,第15回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の報告集会配布書面・最終準備書面目次をご覧ください。