2018年05月30日
原発被害者集団訴訟第2陣とは,いわゆる区域外避難者と呼ばれている6世帯19名(現在の原告数)の原発被害者が,東京電力と国に対し,原発事故による損害賠償を求めている裁判です。
平成29年9月22日に判決が言い渡され,東京高等裁判所へ控訴した「原発被害者集団訴訟第1陣」とは,別の裁判です。
原発被害者集団訴訟第2陣第13回裁判が,平成30年3月29日(木)午前10時半より,千葉地方裁判所601号法廷にて,行われました。
傍聴席は,やや空席が目立ちました。
当日は,弁護団員2名より,約25分ほどかけて,①被告国から提出された第19準備書面に対する反論の要旨,②弁護団が証拠として提出した3月7日と3月13日の現地調査報告書の概要について,法廷で説明いたしました。
法廷で説明した内容の概要は,以下のとおりです。
①被告国から提出された第19準備書面に対する反論の要旨
・被告国は,「長期評価の見解」を含む長期評価の位置づけについて,理学的に否定できないレベル等,成熟性の程度が高くない知見も含まれ,いわば玉石混淆の状態と外部に評価されていたとして,当時の理学的な知見の成熟性の程度を踏まえて,受け手側においてその取扱いを十分検討して判断することを前提にしていたと主張する。
・本年3月16日に被告国の責任を認めた東京地裁判決は,長期評価の見解について,「一学者の論文等とは防災上の重要性を全く異にするものであり,相当な権威のある機関や専門家等によって相当な手続によって出された見解」と判示した。
・本年3月15日に同じく被告国の責任を認めた京都地裁判決は,長期評価の位置づけについて,「地震に関する調査,分析,評価を所掌事務とする被告国の専門機関である地震本部が,地震防災のために公表した見解は,その機関の設立趣旨や性格及び構成員等からして,地震又は津波に関する学者や民間団体の一見解とは重要性が明らかにことなり」「むしろ,このような公式的見解」と判示した。
・地震本部という防災を一元的に進める公的機関によって示された長期評価の位置づけ自体は,そのような知見の内容や評価によって左右されるものではない。被告国の主張はこの点を混同している。
②弁護団が証拠として提出した3月7日と3月13日の現地調査報告書の概要
・平成30年3月7日及び同月13日,原告番号2,4,5,6番のそれぞれの自宅及び周辺において,空間線量率,表面汚染計数率の測定及び土壌汚染の調査を行いました。
・原告番号2,4,5,6番の住宅及び住宅付近の空間線量率は,多くの場所で依然として高い数値を記録し,住宅の空間線量率が低くとも,歩いて行けるほどの近隣の場所では高い空間線量率を記録するなどしています。空間線量率が毎時0.23マイクロシーベルトの指標,土壌汚染密度が1平方メートル当り55万5000ベクレルを超える地点も複数存在しました。また,地上1センチメートルの空間線量率が毎時1マイクロシーベルトを超えるような非常に高い数値を記録する地点も複数ありました。
・このような結果からすれば,原告の方々の避難前住居の生活圏において放射線の影響,健康被害を全く気にしないで生活できるような地域は存在しません。前例のない原子力発電所の事故で,放射線に対する不安や健康被害への危険性が全くないとは到底言えないでしょう。原告の方々が故郷から避難してきたこと,避難を継続していることには合理性が強く認められます。
次回,原発被害者集団訴訟第2陣第14回裁判は,平成30年6月14日(木)午前10時より,今回と同じ千葉地方裁判所601号法廷にて開かれます。
なお,今回の第13回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の報告集会配布書面をご覧ください。