2017年03月23日
原発被害者集団訴訟第2陣とは,いわゆる区域外避難者と呼ばれている6世帯20名(※裁判を提起した時点)の原発被害者が,東京電力と国に対し,原発事故による損害賠償を求めている裁判です。
既に千葉地方裁判所の審理を終えて本年9月22日午後2時に判決が言い渡される「原発被害者集団訴訟」とは,別の裁判です。
原発被害者集団訴訟第2陣第6回裁判が,平成29年2月9日(木)午後1時半より,千葉地方裁判所601号法廷にて,行われました。
傍聴席は,多少,空席が目立ちました。
第6回裁判より,裁判長が交代しました。髙瀬順久裁判官が,裁判長として,本裁判の審理を行うことになりました。
裁判長交代に伴い,これまで行った主張・立証を,改めて裁判所へ伝えなければなりません。この手続を「弁論の更新」といいます。
そこで,弁護団・被告東電・被告国各々,「弁論の更新」として,これまで行った主張・立証の概要を,合計約1時間30分,法廷で口頭で説明しました。
法廷で説明した内容を,骨子に絞ると,以下のとおりです。
1 弁護団の説明
・原告の方々は,被告国が設定した避難指示区域以外の地域から避難してきた区域外避難者です。自主的避難者といわれますが,自主的に避難したわけではありません。
・年間20mSvを基準とした被告国による避難指示区域設定は不合理であり,避難指示区域外からの避難であっても,避難の合理性が認められるべきです。
・全く普通の人々が,全く普通の生活をして,全く普通に暮らしてきたのに,突然,原発事故により「普通」の生活が奪われてしまいました。ただ一方的に、希望を奪われてしまいました。裁判官には,どうか原告の方々本人の声に耳を傾けていただき,被害の実相をその目とその耳で,確かめていただきたいと思います。
・2002年,遅くとも2006年までに,地震,津波に関する研究が進められ,敷地高さを超える津波の予見可能性を裏付ける知見が,もはや無視できない程度に集積されていました。何より決定的であったのは,2002年7月に政府の地震調査研究推進本部が公表した「長期評価」です。
・敷地高さを超える津波が福島第一原発に到来した場合,浸水による全交流電源喪失の危険性があります。そのため,被告国は,規制権限を行使して,①浸水防止設備等の設置・②外部事象の独立性等の要求・③全交流電源喪失に対する代替設備の要求を,被告東京電力に対策するよう義務づけるべきであり,この3つの対策を行うことが可能でした。
・被告国が,規制権限を直ちに行使しなかったことは,法の趣旨,目的に照らし,著しく合理性を欠くものであり,国家賠償法1条1項の適用上違法というべきです。
2 被告東電の説明
・中間指針等を策定した審査会は,第一線の法学者及び放射線の専門家等の委員によって構成され,過去の裁判例等も十分に検証し,裁判上の解決も視野に入れて,賠償水準を検討・設定しています。
・中間指針等は,裁判上の解決規範として,十分に合理性・相当性があります。被告東電は,中間指針等に基づき,裁判外において,広く賠償対応を行っております。
3 被告国の説明
・被告国には,被告東電に対し,福島第一発電所の全電源喪失等を回避するように規制する権限を,有していなかった。
・仮に被告国が被告東電に対する規制権限を有していたとしても,被告国が規制権限を行使しなかったことは,著しく不合理ではない。なぜなら,被告国は本件地震やこれに伴う津波の予見可能性がなく,被告東電に対して数々の行政指導を講じてきたからである。
・低線量被ばくに関する知見に基づけば,避難指示区域外である原告らが避難することは,相当ではない。
次回,原発被害者集団訴訟第2陣第7回裁判は,平成29年4月20日(木)午後1時半より,今回と同じ千葉地方裁判所601号法廷にて開かれます。
なお,今回の第6回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,以下の報告集会配布書面をご覧ください。