原発被害救済千葉県弁護団
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2015年12月11日

原発被害者集団訴訟第3,4回専門家証人尋問手続(第17,18回裁判)のご報告

当弁護団は,18世帯47名の原発被害者(以下「原告」といいます。)の方々の原発事故被害による損害賠償を求めて,東京電力と国を被告とした原発被害者集団訴訟を提起しています。

原発被害者集団訴訟第3,4回専門家証人尋問(第17,18回裁判)として,佐竹健治氏(東京大学地震研究所地震火山情報センター長・教授,地震学(巨大地震・津波)が専門)の主尋問・反対尋問手続が,以下のとおり,実施されました。

佐竹氏主尋問手続:平成27年10月5日(月)午後1時45分~午後3時35分

佐竹氏反対尋問手続:平成27年11月13日(金)午前10時から午後0時25分,午後1時40分から午後2時45分

傍聴席は,いずれの尋問手続においても,満席でした。

 

主尋問手続では,被告国が,様々な質問を行い,被告国に有利な証言を引き出そうとしていました。佐竹氏は,「津波学者の間において,福島第一原発敷地を上回る10m規模の津波が生じると予測することは常識ではない。」「長期評価の見解に基づき,福島沖を含む日本海溝のどこでも明治三陸地震と同程度の大規模な津波地震が起こりうるという見解は,統一見解ではない。現に,土木学会津波評価部会で専門家にアンケートを実施したが,この見解の支持者は25%しかいなかった。」と,証言しました。つまり,7月10日・8月25日における島崎邦彦氏の証言を,間違いであると否定したのです。

 

しかしながら,反対尋問手続では,当弁護団員が,様々な質問を行い,原告側に有利な証言を引き出すことができました。

佐竹氏は,当弁護団員より「津波評価技術は,過去の個別の地震について,詳細な検討をしていない。計算する技術としては,当時の最高度の技術を集約したものである。」「ただし,どこでどんな地震が起きるかということに関しては,長期評価の方が優れていた,そう区分けできますね。」と質問を受け,「はい。」と賛同しました。つまり,今回争点となっている津波の知見に関しては,当弁護団が依拠している‘長期評価’の方が,被告らが依拠している‘津波評価技術’より優れていることを認めたのです。これは,当弁護団にとって,極めて有利な証言です。

また,佐竹氏は,主尋問で証言した土木学会津波評価部会での専門家アンケートについて,当弁護団員より「例えば,アンケートに答えた人が1人100票持っていたとして,日本海溝のどこでも明治三陸地震と同程度の大規模な津波地震が起こるほうに何票入れ,起こらない方に何票入れたということを計算したら,どこでも津波地震が起こる方に65%の票が入ったという意味ですね。」と質問を受け,「はい。」と賛同しました。つまり,主尋問における「福島沖を含む日本海溝のどこでも明治三陸地震と同程度の大規模な津波地震が起こりうるという見解の支持者は25%しかいなかった。」との証言が不正確であるとともに,多くの地震学者が‘長期評価’と同じ見解であることを示したのです。

なお,被告東京電力の代理人や被告国の指定代理人も,当日の午後,佐竹氏に対して,質問をしていました。

 

次回以降の裁判の日程は,以下のとおりです。

平成28年2月5日(金)午前10時~ 第19回裁判 @千葉地方裁判所新館601号法廷

 ※ 第19回裁判の報告集会は,千葉市文化センター9階会議室4(http://www.f-cp.jp/bunka/access-location/access.html)にて実施しますので,ご注意ください。

平成28年3月25日(金)午前10時~ 第20回裁判 @千葉地方裁判所新館601号法廷

 

次回も,傍聴席は抽選となりますので,傍聴をご希望の方は,当日午前9時30分までに,千葉地方裁判所1階ロビーへお越しください。

なお,第17,18回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,下記のとおりです。

 

(1) 当弁護団の主張や証拠の提出

★第36準備書面(敷地高さを超える津波が予見できれば結果回避措置を取るべきこと)の陳述

○概要

① 「津波の高さ」と,「浸水高」・「遡上高」は,明確に区別すべきである。

 「津波の高さ」とは,「平常潮位(津波がない場合の潮位)から,津波によって海面が上昇した高さの差」である。海域または海岸部で測定される。

 「浸水高」とは,津波が陸地に遡上したことによって「建物や設備に残された変色部や漂着物等の痕跡の基準面からの高さ」である。「遡上高」とは,「津波が内陸にかけ上がった結果,斜面や路面上に残された変色部や漂着物等の痕跡の基準面からの高さ」である。海域等で測定される「津波の高さ」と異なり,「浸水高」・「遡上高」いずれも,津波が陸地に遡上した状況を前提として測定される。

 一般に,「浸水高」・「遡上高」は,「津波の高さ」を上回る。

② 津波が陸上に遡上した際の複雑な挙動に依拠する「浸水高」は,本来,精微な予測評価が困難なものである。「津波評価技術」の作成に関与した首藤伸夫教授も,敷地に遡上した津波の運動の予測不能性を訴えている。

③ 被告国と東京電力は,1997年,遅くとも2006年に,敷地高さを超える津波によって全交流電源喪失に至る可能性・危険性を認識していた。

 このことは,被告らが参加した2006年の溢水勉強会,被告東京電力の事故調査報告書にて自認していることからも,明らかである。

④ 「建屋敷地への津波の遡上を絶対に起こさない」という観点から,津波対策は考えられてきた。津波の一般的性質などから,原子炉施設の津波に対する安全性の基準とされるべきは,津波が陸地に遡上した後の「浸水高」ではなく,海岸線を基準として津波が敷地高さを超えて遡上するか否かである。

 被告国と東京電力は,敷地高さを超える津波の予見があれば,本件被害発生防止のための結果回避措置を義務づけることができる。

 

★第37準備書面(国土庁「津波浸水予測図」により敷地高さを超える津波が予見できたこと)の陳述

○概要

① 被告国は,1999年に「津波浸水予測図」を作成・公開した。

 この「津波浸水予測図」は,「4省庁報告書」の検討を踏まえて作成された「7省庁手引き」と,その別冊である「津波災害予測マニュアル」に基づくものである。「津波予測図」は,被告国による津波防災対策の推進の過程において,基礎的かつ中心的な役割を担い,重要である。

② 津波浸水予測計算は,㋐海洋部における津波の発生,㋑発生した津波の海岸部への伝播,㋒海岸に到達した津波の陸地への遡上,という3つの過程を経て行われる。

③ 「4省庁報告書」に基づいて推計された津波の高さは,福島第一原子力発電所の立地点の場合,海岸部において,6.4~6.8メートルだった。

④ 津波防災対策のためには,陸上への遡上による浸水(上記②㋒)を想定する必要がある。

 したがって,被告国が作成する「津波浸水予測図」によって示される津波による浸水が生じる範囲,浸水高についての想定は,原子炉の津波防災対策においても十分に考慮しなければならない。

⑤ 1997年3月に「4省庁報告書」に基づいて推計された津波の高さ(上記③)の下,1999年3月に「津波浸水予測図」により予測すれば,福島第一原子力発電所の主要建屋敷地(O.P+10m)を大きく超える津波の到来,これによりO.P+12~13m程度の浸水高がもらされることは,容易に予見できた。

 

★第38準備書面(損害総論補充 田畑・山林原野の損害)の陳述

○概要

① 田畑や山林原野は,生産財である。財産権が憲法29条により補償された権利であること等を踏まえると,被告国と被告東京電力の共同不法行為によって財産を奪われた場合には,その賠償は完全なものでなくてはならない

② 完全な補償とは,田畑や山林原野の場合,土地・立木・立毛(成育中の農作物)の全てである。この点,不動産の評価方法としては,原価法,取引事例比較法,収益還元法の3種類がある。

 国の違法行為によって損害を受ける場合には,完全補償の場合よりも,より強い意味で「完全な賠償」がなされるべきである。

③ 被告東京電力は,田畑の賠償について,近隣地域等の取引事例等を踏まえて,金額を決めている。しかし,田畑の取引事例は少なく,低迷する取引価格を参考にして,賠償金額を提示すべきではない。

 田畑の場合,実際の売上高から種籾その他の経費を差し引いた期待所得が判明するケースであれば,収益還元法で計算すべきである。

④ 被告東京電力は,山林についても,田畑に対する賠償と同じ考え方である。

 山林は取引事例が乏しいこと等を加味しても,山林の賠償は,農地価格の10%とすべきである。人工林の賠償は,森林国営保険法の保険金額に基づくべきである。そして,不動産登記法の地目が原野であったとしても,現に立木を植栽し育生してきた場合には,立木も賠償対象とすべきである。

 

★第39準備書面(損害総論補充 避難の合理性)の陳述

○概要

① 避難することが合理的であるか否かは,通常人・一般人を基準に,考えるべきである。科学的一般人を基準とすべきでない。なぜなら,低線量被ばくによる放射性被害については科学的知見が対立し,放射線の危険性に関する情報提供の不全や混乱が未だに存在しているため,通常人・一般人が危険だと感じることには社会的合理性があるとみるべきだからである。

 そして,通常人・一般人の多くが放射線被ばくによって健康不安を抱くことが合理的であることは,精神医学・心理学・リスク認定の観点からも明らかである。

 健康不安を抱いた区域外避難者が健康被害を防ぐために避難を選択したことは,平穏生活権に基づく行為として,正当化されるべきである。

② 法律家が,科学的知見に基づいて,将来の健康被害について正しい科学的予測を見極めることは極めて困難である。

 よって,健康被害が生じた際に,その被害結果を区域外避難者個人に引き受けさせることを正当化できるかという点を,重視すべきである。放射線被ばくによる健康被害が生じる高度の蓋然性が科学的に認められるかという点は,重視すべきでない。

③ 何ら過失のない区域外避難者が健康被害を案じて避難した場合,避難慰謝料や生活再建費用が賠償されることは当然である。

 

★証拠の提出

〇提出した主な証拠

東日本大震災により発生した津波の調査結果に係る報告書(被告東京電力作成),津波評価技術の作成に関与した首藤伸夫教授に対する聴取結果書(東京電力原子力発電所における事故調査・検証委員会事務局作成),原発はなぜ危険か-元設計技師の証言-(田中三彦氏著者)。

中谷内一也教授の意見書・証人尋問調書,吉田調書,聴取結果書(東京電力原子力発電所における事故調査・検証委員会事務局作成),地震調査研究推進本部が公表した様々な地震に関する長期評価,原子力土木委員会津波評価部会議事録,聴取結果書(政府事故調査委員会作成),佐竹健治氏執筆文,東京第5検察審査会の議決要旨,都司嘉宣氏の意見書・証人尋問調書。

 

★意見書・上申書の提出

◯検証の方法についての新たな提案

◯上申書(請求の拡張の時期について)

◯IAEA翻訳の証拠提出を求める申立書

◯訴訟進行に関する意見書(原告らの今後の主張立証計画)

〇検証の実施要領について

 

 

(2) 被告東京電力の主張や証拠の提出

★被告東京電力準備書面(9)(政府による避難指示区域内の状況等について)の陳述

○概要

① 避難指示区域の指定状況,避難指示解除の要件,避難指示区域内において許容されている活動・除染の実施状況・空間放射線量の状況,避難指示区域に指定された各自治体における復興計画・事業活動の再開・帰還準備,政府が策定公表した「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(改訂),政府復興方針に基づき見直した被告東京電力における精神的損害賠償についての考え方,の説明。

 政府復興方針では,帰還困難区域を除く避難指示区域についての避難指示の解除の目安時期が「遅くとも本件事故から6年後までに」と明示され,精神的損害の賠償については,実際の避難指示解除時期を問わず「本件事故から6年後に解除する場合と同等の支払を行う」旨を国が指導するものとされている。

② 原告らが本件事故当時居住していた各市町村について,避難指示の内容,避難・除染・空間放射線量の各状況,健康調査の結果,復興の状況,の説明。

 自治体の置かれた状況等により程度の違いはあるが,避難指示解除準備区域と居住制限区域においては,避難指示の解除をにらんでの営農その他の事業活動が一部で再開又はその準備が進みつつある。また,避難指示区域の周辺区域の復興の取り組みと相俟って,生活環境の復旧・復興のための取り組みが始まっている。

 

 

★証拠の提出

〇提出した主な証拠

国直轄除染の進捗状況の概要(環境省作成),「避難指示解除準備区域・居住制限区域における精神的損害等に係る具体的なお取り扱いについて」のプレスリリース(被告東京電力作成),平成27年8月分の内部被ばく検査の実施結果(福島県作成),原告らが本件事故当時居住していた各市町村における復興計画・広報誌・除染実施計画。

 

★意見書の提出

◯損害(共通)主張整理メモへの意見について

〇文書送付嘱託申立てに関する意見書(2)

◯意見書(損害論に関する被告東電の主張の整理について)

 

(3) 被告国の主張や証拠の提出

★証拠の提出

〇提出した主な証拠

佐竹健治氏証人尋問において提示する資料

 

 

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