原発被害救済千葉県弁護団
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2015年04月09日

原発被害者集団訴訟原告本人尋問(第11~第13回裁判)のご報告

当弁護団は,18世帯47名の原発被害者(以下「原告」といいます。)の方々の原発事故被害による損害賠償を求めて,東京電力と国を被告とした原発被害者集団訴訟を提起しています。前回ご報告申し上げたように,昨年12月17日に実施された第10回裁判にて,第1次集団訴訟(=8世帯20名の原発被害者の方々を原告とする集団訴訟)と第2次集団訴訟(=10世帯27名の原発被害者の方々を原告とする集団訴訟)が,一緒に審理されることなりました。

ですので,今後は,「原発被害者集団訴訟」と一括りにし,この2つの裁判についてご報告いたします。

 

原発被害者集団訴訟原告本人尋問(第11~第13回裁判)が,以下のとおり,実施されました。

第1回原告本人尋問等(第11回裁判):平成27年1月16日(金)午前10時~午後5時

第2回原告本人尋問等(第12回裁判):平成27年1月30日(金)午前10時~午後5時

第3回原告本人尋問等(第13回裁判):平成27年3月20日(金)午前10時~午前11時30分

 

全国で初めて,原告の方々が,裁判所で,弁護士や裁判官からの質問に答える形式で,過酷な避難生活が心身に及ぼした影響,故郷への帰還の見込みがたたない苦悩,放射能の恐怖に怯えながらの生活を余儀なくされている状況等,原発事故による深刻な被害実態や理不尽さをお話ししました。

上記3回の裁判を通じて,合計16名の原告の方々やご家族より,おひとりあたり45分程度,お話しいただきました。原告の方々やご家族の生の声を聞くことができることもあり,上記3回の裁判いずれも,傍聴席は満席でした。抽選に外れ,傍聴できなかった方も,多数いらっしゃいました。

 

第4回原告本人尋問等(第14回裁判)は,平成27年5月29日(金)午前10時半より,実施されます。原告の方1名が,裁判所にて,お話しします。

傍聴席は抽選となりますので,傍聴をご希望の方は,お早めに,千葉地方裁判所1階ロビーへお越しください。

 

なお,第11回~第13回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,下記のとおりです。

 記

(1) 当弁護団の主張や証拠の提出

★第31準備書面(省令62号33条4項・非常用電源設備の独立性に関する規制権限不行使の違法)の提出

    ○概要
      ① 経済産業大臣は,被告東京電力に対して,技術基準省令(以下「省令」といいます。)62号33条4項に基づき,㋐非常用電源設備とその附属設備を分散して配置したり,㋑電気系統の一部でも水密化したりすることで,津波の浸水に対して独立性を確保するように,電気事業法40条による技術基準適合命令を行使すべきだった。
         被告東京電力に対して,非常電源設備等の独立性を確保するために津波対策を考慮させなかったことが,被告国の監督権限不行使として違法である。
         また,省令62号33条4項の「独立性」の共通要因に,津波による浸水などの外部事象を加える省令改正を行うべきだったのに,これを怠ったことについても,被告国に違法がある。
      ② 原子力発電所では非常用電源設備の安全確保が極めて重要であるところ,非常用電源設備は被水には極めて弱い。
         非常電源設備が脆弱であることは,平成3年の被告東京電力での溢水事故で実証されていたし,福島第一原発所長吉田氏・保安員安全審査官等より問題視もされていた。海外でも,原子力発電所の溢水に対する脆弱性は,原発事故前に既に明らかにされていた。
      ③ 被告国と被告東京電力は,平成18年の溢水勉強会において,平成3年の溢水事故の教訓を学ぶどころか,無視することによって,非常用ディーゼル発電機機能喪失への対策を立てようとしなかった。
      ④ 福島第一原発の非常用電源設備の設置状況は,省令62号33条4項に違反している。
         なぜなら,非常用電源設備は,同じフロア(タービン建屋地下等)に集中的に設置されており,津波による浸水によって同時に機能喪失する配置だったため,「独立性」の要件を満たしていなかったからである。
      ⑤ 被告国は,省令62号33条4項について,津波などの自然現象が何ら問題にならないと主張するが,誤りである。
         津波などの自然現象を除外する理由がないし,安全設計指針の内容を踏まえれば,被告国の主張が誤りであることは明らかである。
 
  ★証拠申出書(鷺谷威教授)の提出 
     裁判所に対して,地震調査研究推進本部が平成14年に作成した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」が,津波地震について科学的に的確な評価をしたものであること,この「長期評価」に基づく防災対策をとっていれば津波の被害を軽減できたこと等を立証するために,名古屋大学教授である鷺谷威先生の話を聞くように,申入れしました。
 
  ★証拠の提出
    〇提出した主な証拠
     除本理史教授・崎山比早子先生・田中三彦先生・鷺谷威教授の各意見書,政府事故調による福島第一原発所長吉田氏への聴取結果書,富岡町・浪江町を撮影したDVD

(2) 被告東京電力の主張や証拠の提出

  ★被告東京電力個別準備書面(5)の陳述   
    ○概要
       原告番号17番の個別損害に対する反論。

 

★準備書面の訂正書の陳述   

    ○概要
      ① 被告東京電力は,従前,原告番号13番の本件事故当時の居住地が「屋内退避区域」に指定されたと主張したが,誤りのため訂正する。
         実際は,同区域に指定されておらず,南相馬市が独自の判断に基づき,住民に一時避難を要請した区域に過ぎない。
      ② 南相馬市が平成23年4月に自宅での生活が可能な者の帰宅を許容する旨の見解を示していることも踏まえれば,ふるさと喪失慰謝料等原告番号13番が請求する損害は,認められない。

※ 被告東京電力は,証拠を提出していません。

 

(3) 被告国の主張や証拠の提出

  ★第10準備書面の陳述
    ○概要
      ① 段階的安全規制等原子炉施設の安全確保の体系・単一故障の仮定の考え方には,合理性が認められる。
         これらの考え方に基づいて規定された技術基準省令62号は,不合理ではない。
      ② 原告らは,経済産業大臣が技術基準適合命令を発令しなかったことを違法であると主張する。しかし,原告らが違法と主張する基準適合命令は,基本設計または基本的設計方針に関わる事項であり,このような事項は,平成24年に炉規法が改正されるまで,経済産業大臣に授権されていなかった。
         規制権限がなかったのだから,発令せずとも違法ではない。
      ③ 原子炉施設の利用・安全確保については,電気事業者である被告東電に一時的かつ最終的な責任があり,被告国の責任は二次的かつ補完的なものにとどまる。そのため,被告国は,被告東電に認められるような情報収集・調査義務を負うことはない。
         また,保安院に設置された‘地震・津波,地質・地盤合同ワーキンググループ’では,福島第一発電所の安全評価をするにあたり,(原告らが主張する)‘長期評価’に基づく検討が必要との意見はなかった。そのため,原告らが違法であると主張する平成18年の時点にて,‘長期評価’に基づいても,被告国にO.P+10メートルを超える津波の到来について予見可能性は認められない。
      ④ 原子炉施設の安全確保にあたっては,共通原因故障の原因事象となる自然現象を考慮していた。また,技術基準省令62号は,裁判例においても合理性を有すると評価された原子炉施設の安全確保対策の体系にのっとって規定されたものである。
         技術基準省令62号を改正しなかったことは,著しく合理性を欠くとは言えない。
      ⑤ 原告らは,㋐蓄電池の備蓄,大容量化をしなかったこと,㋑複数の確実な注水手段を講じなかったこと,㋒シビアアクシデント対策を講じなかったこと等を指摘し,このような具体的な回避措置をしなかったことが違法であると主張する。
         しかし,直流電源(非常用蓄電池等)の実力は当時高く評価されており(㋐),注水手段をしなくとも原子炉冷却機能を有する他の設備により炉心の冷却が可能であったし(㋑),既存の安全規制において我が国の原子炉施設の安全性は海外と比較しても十分確保されていたし,シビアアクシデント対策としてどのような手法を採用するかは各国によって異なる(㋒)。
         よって,原告らが主張する具体的な回避措置を講じなくとも,著しく不合理と言えず,違法ではない。

 

★個別第17準備書面の4(原告番号17の世帯に係る損害論に対する個別認否)の陳述   

    ○概要
      ① 原告らが主張する弁護士費用は,損害として認められない。
      ② 被告国は,仮に損害賠償責任を負うとしても,被告東京電力が原子力損害賠償法により無過失責任を負うため,被告東京電力よりも一層限定された責任しか負わない。

 

★第11準備書面の陳述   

      ○概要
        ① 国会事故調査委員会の委員であった崎山比早子氏の意見書は,以下の点から,信用できない。
          ア 崎山氏は,広島・長崎の原爆被爆者の生涯追跡調査結果に関する論文等に基づき,100ミリシーベルト以下の線量であっても,統計学的に有意に発がんが証明されている,と述べている。
             しかし,上記論文著者自身が,崎山氏の解釈を否定している。
          イ 崎山氏は,ICRP(国際放射線防護委員会)が低線量被ばくのリスクを過小評価している可能性がある,と述べている。
             しかし,ICRPの1990年勧告・2007年勧告内容を踏まえれば,ICRPが低線量被ばくのリスクを過小評価しているとはいえない。
          ウ 崎山氏は,年間20ミリシーベルト以下であれば避難している住民を帰還させようとする政府の方針を,住民の健康と権利を無視した信じ難い政策である,と批判する。
             しかし,低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループは,科学的知見を踏まえ放射性物質汚染対策の方向性を検討し,住民の意向にも配慮した上で,上記避難基準を,不合理であるとは述べていない。
        ② 放射線の健康影響に関する国会事故調査報告書は,崎山氏の誤った解釈に基づいており,不正確である。
           放射線の健康影響,晩発障害,低線量被ばくによる疾患等について,正確性を欠いている。
        ③ 国会事故調査報告書は,収集された情報の全てが公開されておらず,不正確な事実や評価が散見される。
           以下の点を含む様々な記載について誤りがあり,国会事故調調査報告書の記載を,鵜呑みにしてはいけない。
          ア 福島第一発電所の外部電源喪失の原因が全て新福島変電所の経年劣化や双葉断層上に設置されていることによる地震動の増幅にあった。
          イ 非常用ディーゼル発電機が全て地下に配置されていた。
          ウ 保安院において進捗について十分に監督を行わなかったため,結果として耐震バックチェックの大幅な遅れを招いた
          エ 事故リスクに関する指摘や新知見を葬り去ってきたわけで,こうした考え方が今回の事故を招いた。
        ④ 本件事故は,自然災害である。人災などという評価は誤りである。

★証拠の提出

    ◯提出した主な証拠
     安全設計審査指針,設置許可基準や技術基準省令の解釈に関する解説本,原子力規制委員会が作成した福島第一原発事故中間報告書,原子力安全・保安院が作成した耐震バックチェックに関する報告書,ICRP1990年勧告・2007年勧告
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