原発被害救済千葉県弁護団
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2014年04月08日

第1次集団訴訟の経過報告

当弁護団が,8世帯20名の原発被害者の方々(以下「原告」といいます。)の原発事故被害による損害賠償を求めて,東京電力と国を被告として集団訴訟を提起しています。

前回のご報告後,これまで,平成25年12月13日,平成26年2月14日の合計2回,いずれも千葉地方裁判所601号法廷で,裁判期日が開かれました。

各裁判期日において,当弁護団,東京電力,国がどのような主張をしているのか,以下の通り,各主張の概要をご報告します。

なお,次回の裁判は,平成26年5月9日(金)午前10時半より,千葉地方裁判所601号法廷で行われます。

 

☆第4回期日について(平成25年12月13日(金)午前10時半~)

1 当弁護団

     ★被告らの津波・地震・シビアアクシデントに関する知見の主張
        ①  被告国及び被告東京電力は,平成14年の時点で,
          ㋐ 過去に発生した巨大な津波や地震に関する研究
          ㋑ 文部科学省地震調査研究推進本部が発表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」
          等から,本件事故(全電源喪失による炉心損傷)につながるような地震や津波の発生を予見して,津波に関する防護措置等対策をとるこ  とは十分可能だった。
        ②  被告東京電力は,平成18年の時点で,
          ㋐ 地震学者等の意見
          ㋑ 平成16年に発生したスマトラ沖地震による原発事故の現実化
          ㋒ 被告らが開催した平成18年の溢水勉強会において,被告東京電力が想定を超える津波によって炉心損傷が起こる可能性を報告したこと
          等から,既往津波を超えるような津波が発生することがあり,この場合,全電源喪失の事態が発生する危険性を認識していた。
           被告国も,平成18年の時点で,被告東京電力から報告を受けていたことから,被告東京電力と同じ認識を有していた。
        ③  被告国及び被告東京電力は,平成18年以降も,津波地震に関する知見や貞観タイプの巨大連動地震が繰り返されていること等についての知見がさらに高まっていた。
        ④  シビアアクシデント対策は,日本において,事業者に自主的に委ねられており,海外に比べて遅れていた。
           そのため,被告東京電力が行ったシビアアクシデント対策設備は,従来の安全設備よりも耐力が低く,従来の安全整備よりも先にシビアアクシデント対策設備が機能を失う可能性が高いという,実効性が乏しいものであった。
    ★原子力体系及び規制権限不行使の主張
        ① 原子力発電事業に対する安全規制を目的として規定された,以下の法律や審査指針等の内容の説明。
          ㋐ 電気事業法等の法律
          ㋑ 発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(技術基準省令)
          ㋒ 原子力安全委員会が定める各種指針(審査指針類)
        ② 平成18年当時の技術基準省令及び審査指針類は,次のとおり,国民の生命・健康や環境への安全確保という本来の目的から離れて極めて不十分なものであったこと。
          ㋐ 技術基準省令が,最新の地震,津波の知見等に適合した技術基準に改正せず,「長時間」の全交流電源喪失を考慮した改正もしなかったこと
          ㋑ 審査指針類が,地震及びこれに随伴する津波による浸水による原子炉損傷の危険を想定せず,日々進展する最新の津波の知見を反映させたものでないこと
        ③ 本件の被害法益は国民の生命・身体・健康という不可侵で重要なものである。そして,被告国は,平成18年当時の知見によれば,地震に伴う津波及び全交流電源喪失による過酷事故の発生を予見でき,必要な措置を講じれば,本件事故を回避することは容易であった。
           したがって,被告国が,技術基準省令を改正せず,電気事業法40条の技術基準適合命令及び停止命令等の規制権限を行使しなかったことは違法である。

2 被告東京電力の主張

      ① 原告番号1番の本件事故当時の生活の本拠は,富岡町ではなく,千葉県である。
         したがって,原告番号1番は,本件事故によって避難を余儀なくされた避難等対象者に該当しない。
      ② 原告番号2番の父親が本件事故後に認知症が悪化し誤嚥性肺炎の発症により死亡したことと,本件事故は無関係である。
      ③ 原告番号8番につき,中間指針追補で示された自主的避難等対象区域外である方であれば,自主的避難等に係わる損害賠償を定額で支払っている。
      ④ 本件事故による認められる賠償金と,被告東電が支払った仮払補償金を精算する。
      ⑤ ふるさと喪失慰謝料は,中間指針に定める慰謝料に含まれている。
   
 3 被告国の主張
   ★国の責任についての主張
      ① 被告国が規制権限を行使しなかったことが違法であることを判断するためには,権限を行使しなかった時期前後の一切の事情も踏まえ なければならない。
         原告が主張する4つの要素(被害法益の性質・重大性,被害の予見可能性,被害の結果回避可能性,規制権限行使への期待可能性)だけで,違法性を判断してはいけない。
      ② 行政庁には規制権限を行使するか否か裁量があることを前提に,被告は,二次的かつ補完的な責任を負っているに過ぎない。
         原子力事業者が,一時的かつ最終的な責任を負っている。
   ★原告が主張する損害に対する反論
       被告国は,被告東電の一次的責任を踏まえた二次的責任を負うにとどまる。また,被告東電は,原子力損害の賠償に関する法律により無過失責任を追う立場である。
         したがって,仮に被告国が損害賠償責任を負ったとしても,被告国の責任の範囲は,被告東電の責任よりも限定されるべきである。

第5回期日について(平成26年2月14日(金)午前10時半~)

1 当弁護団 

    ★被告国の規制権限不行使に係る違法性の判断枠組みに関する補足及び予見可能性の程度・内容,予見義務についての主張
         被告国は,
        ①  地震防災のために,地震について情報を収集し,調査を進める義務を負っており
        ②  ①の義務を果たしていたことを前提に,平成14年7月31日に文科省地震調査研究推進本部が長期評価を発表した時点,あるいは遅くとも平成18年までに集積した,全交流電源喪失をもたらす程度の「地震及びこれに随伴する津波」が発生する可能性があるとの情報により
        ③  全交流電源喪失や,放射性物質の大量放出等の重大事故が起こる可能性があることを分かっていたし,きちんと調査して分かるべきだった。
   
    ★国の補充的・二次的責任論に対する反論
        ① 被告国と被告東電が,原子力ムラを作り,原発安全神話を発信し続けた。
        ② 被告国の強い原発推進策があったからこそ,原発を設置できた。
        ③ ①と②を踏まえると,被告国は,被告東電の一次的責任を踏まえた二次的責任を負うのではなく,被告東電と同じ責任を負う。
   
    ★被告東京電力の過失審理が必要であることの主張
        ① 被告東電が本件事故発生を予見する可能性があったのか,予見できたとして本件事故を回避することを怠ったのか(これを「過失」といいます),過失の有無を審理しないと,被告国の責任を判断できない。
        ② 本件事故により損害を判断するためにも,被告東電の過失を審理する必要がある。
    
 2 被告東京電力の主張
    なし。
    
 3 被告国の主張
   ★国が規制権限を行使しなかったことは違法でないとの主張
      ① 被告国は,本件事故までの科学的知見を踏まえても,本件事故に至る程度の津波が発生するとは予見できなかった。
      ② 原告は,「技術基準適合命令」を出して規制すべきと主張するが,そもそも,その命令を発令する要件を満たしていない。
      ③ 被告国は,シビアアクシデント対策として,必要以上に,各種指針類を改訂や行政指導をし,原賠法を制定して事業者に事故を発生させないための法整備を進めた。
      ④ よって,被告国が規制権限を行使しなかったことは,何ら違法ではない
  
 4 原告意見陳述の採用

当弁護団より原告の方の意見陳述の申し入れに対し,裁判所は,当初,意見陳述を実施しない意向でした。

もっとも,当弁護団の強い要請の結果,裁判所は,当弁護団の主張を補足する形として,意見陳述を認めました。

 

 

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