原発被害救済千葉県弁護団
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2014年10月09日

第2次集団訴訟第4回裁判のご報告

当弁護団が,8世帯24名の原発被害者の方々(以下「原告ら」といいます。)の原発事故被害による損害賠償を求めて,東京電力と国を被告とした第2次集団訴訟第4回裁判が,平成26年9月10日(水)午前10時半より,千葉地方裁判所601号法廷にて,行われました。

傍聴席は,ほぼ満席でした。

現在,千葉地方裁判所では,8世帯20名の原発被害者の方々を原告とする第1次集団訴訟と,2世帯3名の原発被害者の方々を原告とする個別訴訟が提起されています。

第2次集団訴訟を審理する裁判所は,今後,原告らの損害についての補充の主張・立証を尽くすことができれば,3つの訴訟を一括して審理する方針であると述べました(これを「併合」といいます。)。

併合が実現すると,合計18世帯47名の原発被害者の方々の裁判が,一度に行われることとなります。

 

第4回裁判において,原告ら・被告東京電力・被告国の主張及び提出した証拠の概要は,下記のとおりです。

(1) 原告らの主張や証拠の提出

    ★第4準備書面(3)の陳述
      ○概要
         被告東京電力から原告らに対して支払われた賠償金額の説明
   
    ★第9準備書面(津波に関する被告らの予見可能性及びこれを基礎付ける知見)の陳述
      ○概要
        ① 被告国は,敷地高さO.P(水位)+10mを超える津波が発生しうることを予見することが可能であったら,規制権限を行使すべきであった。
           本件事故のようなM9クラスの巨大地震・津波レベルまで予見する必要があるという被告国の主張は,誤っている。
        ② そして,被告国と東京電力は,以下の文献等により津波に関する知見を積み重ねた結果,平成18年5月の時点において,福島第一原子力発電所で,10mを超える高い津波の危険性を認識していた。
           ・4省庁報告書(太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査報告書)
           ・津波評価技術(土木学会策定)
           ・長期評価(文部科学省地震調査研究推進本部「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」)
           ・溢水勉強会(被告国と東京電力らが立ち上げた勉強会)
           ・マイアミ論文(被告東京電力が発表した「日本における確率論的津波ハザード解析法の開発」)
   
    ★第10準備書面(本件事故を防ぐために求められる具体的な結果回避措置)の陳述
      ○概要
        ① 本件事故の決定的な原因は,津波により,発電機(非常用ディーゼル)・配電盤が浸水した結果,全交流電源が喪失したことである。
        ② 本件事故前の我が国のシビアアクシデント対策は,外部事象(ex.地震,洪水)や深層防護等の検討が不十分であり,国際基準に大きく遅れをとっていた。また,同対策は,事業者による自主的な取り組みに委ねられ,本件事故前,何ら具体的な規制が被告国により行われなかった。
        ③ 被告国は,諸外国のように,電源や冷却源を多重化・多様化する等,地震・津波による浸水,浸水を原因とする全交流電源喪失に対する安全規制をとっていれば,本件事故を十分に回避できた。
   
    ★第11準備書面(被告東京電力共通準備書面⑴への反論及び原賠法と民法上の不法行為規定の適用問題と賠償額との関係)の陳述
      ◯概要
        ① 被告東京電力の本件事故に関する過失の有無・内容を検討するのであれば,原子力損害の賠償に関する法律,民法,どちらの法律が適用されたとしても,損害賠償の範囲は変わらない。
           しかし,被告東京電力が主張するように,本件事故に関する過失の内容・有無を考慮しない場合,どちらの法律が適用されるかにより,損害賠償の範囲は変わる余地がある。
        ② 原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」といいます。)は,民法709条による請求を排除していない。理由は,以下のとおりである。
           原賠法の目的は,「原子力事業の健全な発達」と「被害者の保護」である。
           民法709条による請求を否定すると,本件事故の原因究明,ひいては将来の原子力事故発生の抑止を妨げる結果を招き,「原子力事業の健全な発達」という目的に反する。また,民法709条に基づき中間指針等の基準に拘束されない損害賠償を行うことは,原賠法の目的である「被害者の保護」にかなう。
       
    ★第12準備書面(ふるさと喪失慰謝料について)の陳述
      ◯概要
        ① 原告らは,本件事故に基づく精神的損害として,㋐避難生活に伴う慰謝料,㋑ふるさと喪失慰謝料(コミュニティ喪失慰謝料),の2つを請求している。
           避難生活に伴う慰謝料とは,避難状態の解消により,いずれかの時期に終期を迎える性質である。
           ふるさと喪失慰謝料とは,コミュニティの崩壊に基づく精神的損害と放射能汚染に対する不安感等に基づく精神的損害等を含み,終期というものを設定できない。             
        ② 中間指針第4次追補で示された慰謝料は,ふるさと喪失慰謝料ではない。
           避難生活に伴う慰謝料の将来分をまとめ払いする期間を延ばしただけである。
   
    ★証拠申出書(原告番号9~16)の提出 
       本件事故により原告番号9~16が被った精神的苦痛・失ったコミュニティを立証するため,裁判所に対して,原告の方々や原告のご家族の話を聞くように申入れしました。
   
   
(2) 被告東京電力の主張や証拠の提出
     被告東京電力は,新たな主張もせず,証拠も提出しておりません。
   
   
(3) 被告国の主張や証拠の提出
  ★第4準備書面の陳述
    ○概要
       原子力安全を確保するための法律,福島第一原発の施設概要,福島第一原発事故の状況の説明。
 
  ★第5準備書面の陳述
    ○概要
      ① 被告国は,本件事故までの科学的知見を踏まえても,本件事故に至る程度の津波が発生するとは予見できなかった。
      ② 原告は,「技術基準適合命令」を出して規制すべきと主張するが,そもそも,その命令を発令する要件を満たしていない。
      ③ 被告国は,シビアアクシデント対策として,必要以上に,各種指針類を改訂や行政指導をし,原賠法を制定して事業者に事故を発生させないための法整備を進めた。
      ④ よって,被告国が規制権限を行使しなかったことは,何ら違法ではない
 
  ★個別第9~16準備書面(原告番号9~16の世帯に係る損害論に対する個別認否)の陳述
    ○概要
      ① 被告国は,仮に損害賠償責任を負うとしても,被告東京電力が原子力損害賠償法により無過失責任を負うため,被告東京電力よりも一層限定された責任しか負わない。
      ② 原告らが主張する損害に関する被告国の見解は,基本的には,被告東京電力と全く同じである。
         但し,原告らが主張するふるさと喪失慰謝料と不動産の損害については,被告東京電力の見解が明らかではないため,被告国の見解は留保する。
         
  ★証拠の提出 
    ○提出した主な証拠
       津波や地震に関する報告書・雑誌,原子力安全委員会や保安院が作成した原発でのアクシデントマネジメント整備に関する報告書。
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